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 今月は子どもの睡眠と睡眠中の異常行動についてお話ししています。睡眠中の異常行動の代表は夜泣きと夜驚症です。

 夜泣きがレム睡眠の異常にともなう現象であるのに対して、夜驚症は深睡眠の異常とされます。夜驚症は深睡眠から覚醒する時に発生する異常行動で、眠りに入って30分から2時間の間に発生することが特徴です。叫び声をともなって突然覚醒し、強い恐怖を示す表情や動作をともない、心拍や呼吸が速くなり、発汗をともなうこともあります。この時に歩き回ることもあります。深睡眠からの覚醒は通常の覚醒ではなくもうろうとしていますから、家族が落ち着かせようとしても反応が悪く、多くは覚醒後に夜間に起こったことを覚えていません。

 夜驚症の90%が2歳から6歳までに見られます。夜驚症はノンレム睡眠の深睡眠から覚醒する時の異常によって発生するとされますから、大脳皮質がある程度発達していなければ起こらず、2歳未満には見られないと言われます。入眠直後の1~1.5時間で深い睡眠が見られます。ここから覚醒する時に発生しますから、夜驚症は入眠後30分から2時間以内に起こります。発症の誘因として恐怖、緊張、興奮などが認められることがあります。これは前に体験したことの記憶の影響を受けて怖い夢を見るのです。恐怖の内容としては怖いテレビドラマや本、交通事故やガス爆発などの体験や目撃、暴力をともなういじめなどがあり、緊張をともなうものとしては入園、入学、学校行事など、興奮には旅行や行楽など楽しい出来事も含まれます。ただ低年齢ではこれらの誘因が確認できないもののほうが多いと言われます。

 最近の厚生労働省の調査によると、午後10時以降に寝る幼児の比率は40%以上あるとされます。これは子どもの睡眠が大人の夜型生活の影響を受けていることの表れです。睡眠は子どもばかりでなく大人にとっても心身の健康を維持するためにとても大切なものです。良い睡眠の習慣をつけて健康な生活を送りたいものです。

2005年1月25日掲載

 乳幼児の後半になると夜中に目を覚まして急に泣き出し、何十分も泣き止まなくなることがあります。どこかが痛いのではないかとか重い病気で泣いているのではないかと心配になりますが、しばらく泣き続けると何もなかったかのようにけろっと泣き止みます。しかし毎晩、決まって深夜に泣き出すと両親は大変心配になります。これが夜泣きです。また睡眠中に起き出して歩き回るとか、つじつまの合わない会話をする、叫びだすなどの、いわゆる「寝ぼけ症状」は夢中遊行とか夜驚症と言われます。  

 夜泣きは生後7~8ヵ月によく見られ、夜驚症や夢中遊行は生後2歳ころから6歳ころまで多く見られます。このような睡眠中の行動異常は睡眠の発達過程に見られる現象で、ほとんどのものは自然に治りますが、交通事故などの恐怖体験やいじめなどによるPTSD(外傷後ストレス障害)や睡眠中に見られるてんかん発作に対しては適切な治療が必要ですから鑑別しておく必要があります。

 睡眠中の異常行動はレム睡眠の異常によるものと、深睡眠の異常によるものに分けられます。夜泣きはレム睡眠の異常によるもので毎晩決まった時刻に現れる傾向があります。レム睡眠時の脳波上は覚醒に近いパターンを示しているのに、筋肉の緊張は睡眠中でもっとも低下していますから姿勢を維持することや大きな運動を行うことは出来ません。しかしレム睡眠中には小さな筋肉が瞬間的に収縮する運動が多く見られます。このような小さな筋収縮が過剰に起こると覚醒してしまいます。夜中によく目を覚ます子や夜泣きする子はレム睡眠中に体動が過剰に起こって起きてしまうためだとされます。

 夜泣きに対しては特別な治療の必要はありません。睡眠が十分発達すれば夜泣きは自然に治ります。夜、ぐっすり眠るには昼間の活動レベルを上げて、しっかり遊ぶこと、しっかり運動することです。また家族の生活も子どもの睡眠に大きな影響を及ぼしますから、両親もストレスを少なくして規則正しい生活を心がけましょう。

2005年1月18日掲載

 睡眠は人が生きていくうえで欠かすことのできない現象のひとつです。人は毎日ほぼ決まった時間に寝て、ほぼ決まった時間に起きます。これは人の睡眠・覚醒のリズムが日出や日没という地球の自転にともなう明暗のリズムに一致して変動しているからです。

 しかし睡眠リズムも社会の進歩にともなって変化します。生活のパターンが夜型になると、睡眠のリズムも影響を受けて、夜更かしで朝寝坊のパターンが増えています。結果、朝から居眠りをするなど睡眠不足から頭痛などの体調不良を訴える子どもが増加してきます。今月は子どもにとって大切な睡眠について考えてみました。

 子どもの成長にとって睡眠は大きな意味を持っています。昔から「寝る子は育つ」ということわざがあるように、睡眠の良否と成長の間には密接な関係があります。これには睡眠中に分泌される成長ホルモンが関与しています。入眠直後の深い睡眠で成長ホルモンの分泌が多く、よく寝る子は成長ホルモンの分泌が多くなるために成長も良くなるのです。またよく眠る子どもには眠りの邪魔になるような病気がないためよく成長すると考えられます。

 良い睡眠とは寝つきが良く、夜中に目覚めることなく、気持ちよく目覚めることが出来る睡眠です。入眠直後に深い睡眠が出現し、その後明け方まで数回のレム睡眠が規則的に出現し、明け方に浅い睡眠になりそのまま自然に目覚めると快適な覚醒が得られます。

 気持ちよく目覚めると1日の生活は活発で充実したものになります。反対に夜更かしをすると、寝つきが悪くなり、入眠直後の深い睡眠が出現し難く、いたずらに長い睡眠を必要とします。当然、気持ちよく目覚めることは出来ませんから昼間の生活は不活発なものとなります。

 睡眠の役割には休息以外にもさまざまなものがあります。成長ホルモンをはじめさまざまなホルモンが睡眠に関係して分泌していることはよく知られています。私たち現代人の生活時間は睡眠を犠牲にして行われていると言われます。このような夜型社会は、心身ともに未発達な子どもたちに大きな影響を及ぼしていることを理解しなければなりません。

2005年1月11日掲載

 インフルエンザが流行し始めると「熱が出たのでインフルエンザの検査をして下さ」と熱の出始めに医療機関を受診する人がいます。インフルエンザの検査はのどや鼻の粘膜から出るウイルスと試薬を反応させることで判定するので、検査で陽性結果を得るためには一定量のウイルスが必要となります。従って、発病初期のウイルス量が少ない時期にはたとえインフルエンザであっても検査は陰性になることがあります。検査時期が早すぎると検査結果を誤って判断してしまう可能性があります。冬に発熱や咳、鼻水などの感冒症状を示すウイルス感染にはRSウイルスやライノウイルスがあり発熱だけではどのウイルスによるものかは区別できません。あまりあせって検査するとかえって治療の機会が遅れたり、反復検査によって無駄な費用をかけたりすることになります。また周囲に明らかにインフルエンザの診断がついた人が居れば必ずしも検査にこだわることはありません。成人の基礎疾患を持った人に限って今年から抗ウイルス剤の予防投与が認められました。ただし予防投与の場合には保険の適用はありません。

 インフルエンザにかかって治療を受けた後、熱が下がるとすぐに学校や保育園など集団生活を始める人がありますが、熱が下がっても鼻粘膜にはまだウイルスが残っています。解熱後1日目には80%、2日目でも40%以上の患者さんにウイルスが認められ3日目になってやっと10%台に下がるとされます。もともとインフルエンザの経過は二峰性の発熱パターンをとることが知られています。3~4日目に一時熱が下がって治ったように見えるのですがその後、もう一度発熱するのです。抗ウイルス薬を投与してもウイルスが死ぬ訳ではなくのどや鼻からウイルスが検出されると言われます。また薬剤に対する耐性ウイルスの出現も報告されるようになりました。インフルエンザにかかった時には解熱後3日間くらいは家に居るようにしましょう。インフルエンザは合併症が多い疾患です。治ったと思っても十分に時間をとることで不必要な合併症を予防するとともに集団へ感染を拡大させない配慮がほしいものです。

2004年12月28日掲載

 インフルエンザの潜伏期間は1~2日と短いために流行が始まると一度に大勢の患者さんが発生することになります。とくにウィルスに対する免疫を持たない子どもたちが集団生活を送る学校、幼稚園、保育園などでは大流行になる可能性があります。インフルエンザを予防するためにはワクチンが第一です。ワクチンを受けていてもインフルエンザにかかる人もいますが小児でも20~40%は有効だとされます。毎年ワクチンを受けることによって集団としての免疫を高めておくことが大切です。今回はインフルエンザの一般症状についてお話しします。

 インフルエンザは悪寒をともなう急激な発熱で発病します。発熱した後に咳や鼻水、のどの痛み、頭痛、関節痛、全身倦怠(けいたい)感などが出現します。嘔吐や下痢などの消化器症状も多く見られます。子どもでは急激な発熱にともなってけいれんを起こすこともあります。インフルエンザにかかると基礎疾患や慢性疾患を持つ人はそれらの症状が重くなることがあります。とくに呼吸器系の合併症として肺炎や気管支炎が、耳鼻科的な合併症として中耳炎などが多く見られます。また脳炎・脳症と言われる神経系の合併症には特に注意が必要です。以前は熱が出ると解熱剤を投与することが一般的でしたが、解熱剤の一部が脳症の発生に関与していることが明らかになって、その使用が控えられるようになると、以前よりも脳症の発生は減少していると言われます。さまざまな疾患で日常的に薬剤を服用している人は高熱が出ると薬剤の代謝過程が影響を受けることによって薬剤の副作用が出やすくなることがあります。また食欲低下や嘔吐などのために脱水症を起こしやすくなります。

 体力や抵抗力のない乳幼児や基礎疾患を持つ人たちはとくに注意が必要です。体力を落とさないようにするには栄養や睡眠を十分にとること、外出先から帰ったときには必ずうがいと手洗いをしてのどや手指に付着したウィルスを体内に侵入させないようにすることです。心理的なストレスや肉体的な疲労は免疫力を低下させます。規則正しい日常生活を送ることが最も大切だと考えられます。

2004年12月21日掲載

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