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 皮膚にできた発疹(はっしん)を主訴として救急外来を受診する人が少なくありません。多くの場合に「じんましんが出ました」と言いますが、中にはじんましん以外の発疹の場合もあります。

 じんましんの基本は大小の別はあっても少し盛り上がった発疹を特徴とします。小児のじんましんはそれほど頻度の多い疾患ではありませんが、かゆみがひどいために睡眠が妨げられたり、引っかき傷をつくったりするなどさまざまな問題が見られます。
 
 今月は小児のじんましんについて考えてみました。

 じんましんは輪郭のはっきりした皮膚の赤い膨らみ(膨疹)でかゆみをともないます。形は円形・楕円(だえん)形・環状などいろいろな形をとり、色は紅色・ピンクから白色で、大きさは大小さまざまで数ミリ程度のものから大きいものは全身に大きく地図状に広がるものまであります。多くは短時間に消えてしまいますが別の場所に移動することもあります。じんましんの症状が激しい場合に皮膚だけでなく、唇やのど、消化管などの粘膜にも生ずることがあり、そのときには呼吸困難、腹痛や下痢などの症状が見られ、まれにショックを起こすこともあります。

 じんましんが起こるには、組織にある肥満細胞が何らかの刺激を受けて、ヒスタミンなどの化学伝達物質を含む顆粒を放出することによって発生します。ヒスタミンは毛細血管や最小静脈に働き、血管を拡張しその透過性を高進させます。その結果、血管内から組織内に血漿(しょう)成分が漏出して、局所的な浮腫状の変化が起こります。この膨隆した発疹がじんましんです。

 じんましんは数時間から数日以内に消失する急性の経過をとるものがほとんどですが、中には慢性の経過をとり何ヵ月も続くものいがあります。じんましんの発生初期に急性で終わるのか慢性化するのかの判断はできません。また原因が簡単に分かるものばかりではありませ。呼吸困難やショックを起こす重症のじんましんは、早期に適切な処置をとる必要がありますから原因検索とともに慎重な取り扱いが必要とされます。

2005年10月11日掲載

 今月は熱性けいれんについて考えてきました。熱性けいれんを繰り返す場合に問題になるのはてんかんとの区別です。てんかんは無熱時に反復する発作が特徴で脳神経細胞の異常な発射(異常な興奮)が原因で起こる疾患とされます。

 一般には脳波検査などでてんかんの診断がつけばその後数年間は継続的な治療のために通院が必要となります。熱性けいれんであれば2~3年、発作時のみの予防処置を行います。
 初めて熱性けいれんを起こした場合にそのけいれん発作がてんかんであるのかどうかを判断することははなはだ困難とされます。

 てんかん発作の危険性因子には、けいれんが長時間続く場合、24時間以内に繰り返してけいれんが起こる場合、またけいれんが半側性である場合や身体の一部分から起こる場合、家族にてんかんの病歴がある場合、それまでの発達歴に遅れがある場合や神経疾患を有する場合などが考えられます。発熱時のけいれんであっても以上のような危険因子を持つ場合にはまず詳細な病歴を聞き取り、発達の異常の有無や家族歴を明らかにした上で、脳波検査やCT・MRIなどの画像検査、その他の代謝性疾患を調べるための生化学的な検査をする必要があります。

 熱性けいれんに対する治療および予防について、最も多く使用されているのはジアゼパム座剤です。来院時にけいれんが止まっていない場合にはできるだけ早くけいれんを止める治療を行います。けいれんが止まっている場合には予防的にジアゼパム座剤を使用するのが一般的です。もし家庭でけいれんが5分以上続いて止まる気配がなければ救急で受診する必要があります。この時にはけいれん重積になる可能性を考えて入院施設のある病院を選ぶほうがいいと思います。

 ジアゼパム座剤が使用できるようになって熱性けいれんの予防は大変楽になりました。熱の出始めに1回、8時間後に2回目を使用することによって3~4日間けいれんの予防ができるのです。ただ普通の熱性けいれんはそう何回も起こることはありませんから、どのような時に使用するのか、いつまで使用するのかなど正しい診断によっていたずらに不安がることなく薬剤の過剰使用のないようにすることも必要です。

2005年9月27日掲載

 乳幼児の熱性けいれんは小児救急疾患の代表的なものです。熱性けいれんはほとんどが5分以内に止まり、心配することはないとされます。

 しかしけいれん発作が目の前で1分間以上続き、だんだん顔色があおくなっていくところを見れば、本当に自然に止まるのかと随分不安になります。これを見た家族が心配するのは当然のことです。また初めてけいれん発作を見たときに、それが単純な熱性けいれんであるのか、重大な神経疾患の初発症状であるのかを判断することは大切なことですがとても難しいことです。

 熱性けいれんで重要なことは単純な熱性けいれんであるのか、他の疾患に関連して起こったけいれんであるのかを区別することです。

 初めての発作でそれを区別するのはなかなか難しいことです。その鑑別のためにはけいれんの持続時間やけいれん発作の形、子どもの病歴や家族歴、基礎疾患の有無などの情報が役に立ちます。

 一般にけいれん発作が長い場合、半側性(半身で起こる)や焦点性(一部から全身に広がる)のけいれん、それまでに無熱性(平熱で起こる)けいれんがあった場合、発達遅延や脳性まひなどの神経疾患を持つ場合、家族にてんかんがある場合などには単純な熱性けいれんとは考え難いものです。

 熱性けいれんであってもけいれん発作が長く続くことがあります。けいれん発作が30分以上続く場合をけいれん重積と言います。この場合にはできるだけ早くけいれんを止めることが重要です。

 発作が長く続くと呼吸抑制がおこり低酸素血症が発生し心肺機能の抑制も起こることがあります。また脳浮腫が起こると生命の危険や神経系の後遺症につながることがあります。
 けいれん発作が長時間続く場合にはその原因として脳炎・脳症、髄膜炎など中枢神経系の疾患、また低血糖などの代謝異常症、発熱をきっかけに発症したてんかんなどが隠れていることがあります。このような基礎疾患を正確に診断して治療するためには入院して治療を行うのが原則です。

 1回だけの熱性けいれんだけで将来の再発を予想することは困難です。けいれんが止まっていればあわてて夜中に救急受診する必要はありません。意識障害など全身の状態を見極めてゆっくり小児科医を受診しましょう。

2005年9月20日掲載

 熱性けいれんは乳幼児が急な発熱にともなって起こすけいれん発作で、日本人では5~8%の子どもに見られると言われます。これは決して珍しい疾患ではありません。熱性けいれんは大部分が自然におさまるので冷静に対応すればほとんど問題になることはないとされます。
 しかし一度熱性けいれんを経験した家族にとって、けいれん発作の怖さや驚きは計り知れないものがあります。また熱性けいれんは舌をかんで危険であるとか、くりかえすと障害を残す、何度もおこすとてんかんになるなどの誤った知識を持っている人もたくさんいます。熱性けいれんは小児救急で取り扱う疾患の代表です。今月はさまざまな問題をかかえた熱性けいれんについてお話ししたいと思います。

 熱性けいれんの定義は「通常38度以上の発熱にともなって乳幼児期に生じる発作性疾患で、中枢神経感染症、代謝疾患、その他明らかな原因疾患のないもの」とされています。その予後は良好で、過半数は生涯1回きりの発作しか起こさないと言われます。

 熱性けいれんは子どもが発熱したときに急に意識がなくなって手足や全身が硬直する状態のことです。このとき多くは歯を食いしばって目を開けていますが意識はありません。呼吸は止まっていますから、顔色は蒼白(そうはく)になり口唇にはチアノーゼが見られます。けいれんの形には硬直してブルブルふるえるものやガクガクして大きく動くタイプがあります。口はかみしめていますから舌をかむことはありません。

 熱性けいれんとよく似た状態に高熱せん妄や悪寒があります。高熱せん妄は高熱でうなされて生じる意識障害のことで、精神的興奮や幻覚を経験することがあります。これはけいれんに比べて始まりと終わりが不明確であり呼吸抑制を認めることはありません。

 悪寒は急激な体温上昇時に見られる手足や全身の細かいふるえです。この時にも四肢を硬直させたり口唇色や顔色不良が見られたりすることも多く熱性けいれんと誤られることがあります。このような症状を熱性けいれんと区別するにはその状態を十分に観察することが大切です。

2005年9月13日掲載

 日本小児科医会は昨年1月「子どもとメディア」の問題に関する提言を行いました。その内容は、

1.2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控える

2.授乳中・食事中のテレビ・ビデオ視聴は止める

3.メディア接触は1日2時間までにする

4.子ども部屋には、テレビ、ビデオ、パソコンを置かない

5.保護者と子どもでメディアを上手に使うルールを作る


-というものです。メディア接触が子どもの成長に及ぼす影響について配慮することの緊急性、必要性を強く訴えています。

 この提言はテレビなどのメディアの有害性について早くから警告していたアメリカの小児科学会の提言にならって作られたものです。日本小児科医会の提言は私たち小児科医にとって非常にショックでした。それはテレビ視聴が言葉の遅れや対人関係の障害を引き起こすというとてもショッキングな内容だったからです。ただ正常者がテレビ視聴で言葉の遅れやコミュニケーション障害を起こすことは証明されている訳ではありません。また自閉症の子どもにテレビを見続けさせると症状は悪化すると言われますが、テレビを見ると自閉症になると言うわけではありません。

 2歳までテレビを見せないことがはたして今の日本の家庭で可能なのか判りません。日本のほとんどの家庭にはテレビ・ビデオがあって食事中はもちろんほとんど一日中テレビがついている家庭もあるのではないでしょうか。テレビをつけていると子どもが静かにしているからという理由でテレビやビデオに子守りをさせていませんか。確かに子どもたちはテレビが好きでテレビアニメのキャラクターは大人気です。

 授乳中にテレビをつけていると3ヵ月未満の赤ちゃんでも画面をじっと見つめます。赤ちゃんは動くものに注意を向けるのです。しかし赤ちゃんがテレビに話しかけても当然テレビは返事をしてくれません。言葉の発達や対人関係の成立にはいいタイミングでの受け答えが必要です。一方通行の情報ではコミュニケーションを確立することはできません。画面を見ているからという理由で赤ちゃんにテレビやビデオを見せ続けてはいけません。漫然とつけっぱなしになっているテレビを一度消してみませんか。

2005年8月23日掲載

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