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 熱性けいれんは乳幼児が急な発熱にともなって起こすけいれん発作で、日本人では5~8%の子どもに見られると言われます。これは決して珍しい疾患ではありません。熱性けいれんは大部分が自然におさまるので冷静に対応すればほとんど問題になることはないとされます。
 しかし一度熱性けいれんを経験した家族にとって、けいれん発作の怖さや驚きは計り知れないものがあります。また熱性けいれんは舌をかんで危険であるとか、くりかえすと障害を残す、何度もおこすとてんかんになるなどの誤った知識を持っている人もたくさんいます。熱性けいれんは小児救急で取り扱う疾患の代表です。今月はさまざまな問題をかかえた熱性けいれんについてお話ししたいと思います。

 熱性けいれんの定義は「通常38度以上の発熱にともなって乳幼児期に生じる発作性疾患で、中枢神経感染症、代謝疾患、その他明らかな原因疾患のないもの」とされています。その予後は良好で、過半数は生涯1回きりの発作しか起こさないと言われます。

 熱性けいれんは子どもが発熱したときに急に意識がなくなって手足や全身が硬直する状態のことです。このとき多くは歯を食いしばって目を開けていますが意識はありません。呼吸は止まっていますから、顔色は蒼白(そうはく)になり口唇にはチアノーゼが見られます。けいれんの形には硬直してブルブルふるえるものやガクガクして大きく動くタイプがあります。口はかみしめていますから舌をかむことはありません。

 熱性けいれんとよく似た状態に高熱せん妄や悪寒があります。高熱せん妄は高熱でうなされて生じる意識障害のことで、精神的興奮や幻覚を経験することがあります。これはけいれんに比べて始まりと終わりが不明確であり呼吸抑制を認めることはありません。

 悪寒は急激な体温上昇時に見られる手足や全身の細かいふるえです。この時にも四肢を硬直させたり口唇色や顔色不良が見られたりすることも多く熱性けいれんと誤られることがあります。このような症状を熱性けいれんと区別するにはその状態を十分に観察することが大切です。

2005年9月13日掲載

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