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 RSウイルスは毎年、冬から春に流行するウイルスで気管支炎、細気管支炎、肺炎などを起こす代表的なウイルスです。RSウイルスは乳児の70%が1歳までに感染を受け、2歳までに100%がかかるとされます。成人や年長児でもかかりますが、新生児や乳児期早期には細気管支炎など下気道感染症を起こして重症化しますから注意が必要です。

 このウイルスの潜伏期間は3~5日、伝播(でんぱ)可能期間は1週間とされます。感染は人から人へ、鼻汁や喀痰(かくたん)が手指や器物を介して、また直接接触して、あるいは飛沫(ひまつ)感染によって伝染します。感染したウイルスが鼻の粘膜に到達すると感染が成立します。

 症状は一般の風邪と同様に発熱、鼻水、せきなどが2~3日続きます。

 ウイルスを含んだ鼻汁や分泌物が気管などの下気道へ吸い込まれますと感染が下気道におよびます。とくに問題になるのは細気管支炎です。せきが強まり息を吐く時にゼーゼー言い、呼吸数が多くなり、陥没呼吸などの呼吸困難が出現します。子どもは不機嫌になり哺乳困難や睡眠障害も見られます。未熟児・新生児では無呼吸を反復することがあり、突然死の原因になることがあります。

 細気管支炎が起こると、細気管支の周辺にリンパ球など炎症細胞が浸潤し、その周辺の浮腫状変化や細気管支内への粘液分泌の増加が見られます。その結果、細気管支の内腔が閉塞し、末端の肺組織は無気肺や肺気腫となります。これらの結果、呼吸困難の症状が出現するのです。

 RSウイルスによる肺炎や細気管支炎は他のウイルス感染による肺炎と異なることはありません。原因を特定するために鼻水の中のRSウイルスの有無を調べることも大切です。

 RSウイルスは新生児、とくに早産児では単なる鼻づまりから無呼吸を来すことがあります。また心疾患や慢性肺疾患などの基礎疾患を有する乳幼児では呼吸障害が強くなる可能性があります。

 RSウイルスは誰でもかかる病気ですが特別な治療法はありません。冬から春に風邪をひいた人が新生児や乳児にその風邪をうつさないことが大切です。

2005年11月22日掲載

 クループは喉頭(こうとう)炎など急性の喉頭狭窄(きょうさく)によって呼吸障害を来す疾患の総称です。喉頭は咽頭(いんとう)の後下部にあって気管の一番上の部分です。したがって喉頭に強い炎症が起こると気道の狭窄を起こして、息を吸うときにゼーゼー鳴ったり、犬が吠えるようにケンケンしたせきが出たり、声がかすれるようになります。ひどくなると窒息して呼吸困難やチアノーゼが見られるようになります。

 昔はクループといえばジフテリアを指すことばでしたが、3種混合ワクチンの普及によってジフテリアを見ることはほとんどなくなりました。したがって最近はクループといえば喉頭炎、喉頭気管炎、喉頭気管気管支炎、急性喉頭蓋(がい)炎を指すことになります。この中で急性喉頭蓋炎は急速に進行する重篤な呼吸困難が見られることがあり注意が必要です。

 その他、広義のクループに含まれるものに喉頭異物や外傷性のもの、アレルギー性のものなどがあります。同様の症状を来しますから原因を明らかにすることが大切です。

 乳幼児のクループが気道狭窄を起こしやすいのは次の理由によるものです。気道の発達が不十分であるため、炎症によって浮腫が起きやすく繊毛運動が障害されやすいこと、炎症による分泌物を喀痰(かくたん)として排出する力が弱いこと、また声門下の気道粘膜や粘膜下の組織は軽い炎症でも浮腫状に腫れやすいことなどが原因として挙げられます。その結果、呼吸困難から窒息に至る危険性が高くなるのです。

 クループの中で急性喉頭蓋炎はb型インフルエンザ桿(かん)菌が原因となる細菌感染で、突然の高熱と激しい咽喉の痛みやせきで発病し、12時間以内に呼吸困難や窒息を来す疾患です。原因が細菌感染ですから、初期の発熱や咽頭痛が見られた時点で、細菌感染を疑うことが大切です。

 しかしクループの大部分はウイルス感染で、原因はパラインフルエンザ、A型インフルエンザ、RS、アデノ、エンテロウイルスなどが知られています。

 ウイルス性のクループは発病の経過がゆるやかで、鼻水・鼻詰まりで始まり1~2日でクループ症状、3~4日で症状がピークに達し回復に向かいます。しかし呼吸困難が強ければ、入院・呼吸管理が必要になることもあり油断はできません。

2005年11月15日掲載

 冬に流行するウイルス感染症の代表はインフルエンザです。夏にはヘルパンギーナやプール熱が流行しました。

 夏と冬の間に流行する風邪の原因ウイルスにはいくつかの重要なウイルスがあります。今月は季節とともに流行するウイルスについて、さらに子どもにとって大切な呼吸器疾患との関係についてお話したいと思います。

 夏に流行したヘルパンギーナやプール熱は高熱を主症状としますが、これらの夏風邪が終わって増えてくる風邪の症状は鼻水から始まることが多くなります。

 秋から冬によく見られる風邪の原因はライノウイルスで、全ての風邪の30%以上を占めるといわれます。この風邪の症状は鼻水やせきと軽い発熱をともないますが、症状は比較的軽く早い時期に治ります。しかしウイルスの型が多く何回もかかることが特徴です。さらにぜんそくなどのアレルギー疾患をもつ子どもがこのウイルスにかかると、ぜんそく発作が誘発されることがあります。ライノウイルスは季節の変わり目に流行する風邪ウイルスですが、ぜんそく発作の原因になることがあり注意が必要です。

 少し寒くなるころに流行するのがRSウイルス感染症です。このウイルスは乳児の半数以上が1歳までにかかり、2歳までにはほぼ100%の子どもが感染を受けるとされます。母親からの免疫ではRSウイルスの感染を阻止することは困難とされていますので、新生児でもかかると言われます。しかし母体免疫の有無は感染後の重症化には大きな影響を持っていますから、母体免疫を十分に受け取らずに生まれてきた早産児では重症となることがあります。

 RSウイルス感染症の症状は鼻水とせきで始まり成人や年長児では一般の風邪として終わりますが、新生児や乳児期の早期には、下気道に炎症が拡大して重篤な呼吸障害が出現することがあります。先天性心疾患や慢性肺疾患など基礎疾患を持つ子どもには呼吸機能に大きな負担となります。

 ライノウイルスやRSウイルスに対するワクチンはありません。予防法は一般の風邪と同じように手洗いやうがいなどでウイルスの侵入を防ぐことで、とくに風邪をひいた人が新生児や乳児に接触する時には注意することが大切です。

2005年11月8日掲載

 じんましんの中にはアナフィラキシーと呼ばれる重篤で生命にかかわるような全身性の反応をあらわすものがあります。アナフィラキシーに対しては早期の適切な処置が必要であるばかりでなく、以後の予防も大切です。

 アナフィラキシーの症状としてはじんましん・紅斑・血管性浮腫などの皮膚症状、喉頭(こうとう)浮腫・気管支狭窄(きょうさく)などの呼吸器症状、血圧低下や不整脈などの循環器症状、吐き気・嘔吐・腸蠕動(ぜんどう)高進などの消化器症、頭痛・もうろう状態・意識消失などの神経症状を示すことがあります。この中でとくに呼吸困難と血圧低下があればアナフィラキシーと診断されます。

 これらの症状は原因植物の摂取中に出現することもありますが、摂取後数時間して出現することもあります。一般的には口腔内のピリピリ感や口唇、口腔粘膜、咽頭(いんとう)のかゆみや腫脹(しゅちょう)で始まります。その後、じんましん、紅斑、血管性浮腫が出現します。最初は局所の症状だけですが、次第に全身に広がります。その後、呼吸器症状や消化器症状へ発展します。

 症状には個人差があります。上気道の症状として大切なのは喉頭浮腫です。かん高い咳(せき)、かすれ声、声が出ない、ゼーゼー、飲み込みにくい、喉頭の締め付けられるような感じなどが見られます。下気道の症状には咳、ゼーゼー、呼吸困難など、消化器症状には吐き気、腹痛、嘔吐、下痢があります。一部の人には、動悸(どうき)、胸痛、不整脈、失神が見られます。血圧低下や意識消失といったショック状態になることもあります。ショック状態に対しては早期に適切な処置をしなければ生命に危険を及ぼす可能性もあります。

 また最近、原因食物摂取後4時間以内に運動するとアナフィラキシーが誘発される「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」が話題になっています。発病したもののうち、原因食物摂取後60分未満に運動した場合が85%を占め、そのうちの75%が運動開始後30分以内に発病しています。この疾患は10~20歳代に多く見られ、原因として小麦、甲殻類、ソバ、魚類、果物が多くなっています。運動前には原因食品の摂取を控えること、原因食品を摂取したときには食後2時間は運動を控えることなどが大切です。

2005年10月25日掲載

 じんましんの分類にはさまざまな分け方がありますが、アレルギー性と非アレルギー性に分けるのが一般的です。免疫グロブリン(IgE)や免疫複合体、補体などが関与する場合をアレルギー性のじんましん、免疫学的な機序が関与しない場合を非アレルギー性のじんましんと区別します。

 アレルギー性じんましんは肥満細胞についた特異的IgE抗体と原因食物が反応して、肥満細胞からヒスタミンを含む顆粒が放出されます。この反応は一般に即時型反応と呼ばれるアレルギー反応の代表です。アレルギー反応の起こり方にはじんましんのほかに湿疹(しっしん)や下痢、せき、喘鳴(ぜんめい)などがあります。

 アレルギー性のじんましんを起こす原因には食物、薬物、消毒薬、金属、ダニ、真菌、細菌、花粉などがあります。原因食物としては魚介、カニ、エビ、牛乳、卵、ソバ、小麦、肉などがあります。薬物としてはペニシリンやセフェムなどの抗菌薬や鎮痛解熱薬が挙げられます。食物が原因の場合にはアレルギー検査として特異的IgEの検査が役に立ちます。

 非アレルギー性のじんましんには機械的刺激、寒冷、温熱、日光、ストレス、アスピリン投与などが挙げられます。これらの刺激が直接、肥満細胞に働く場合と自律神経系などさまざまな経路を介して肥満細胞を刺激する場合があります。非アレルギー性のじんましんは原因が特定できない場合が多く、慢性化することもあります。

 じんましんに対する治療の第一は原因を特定して、それを取り除くことです。急性のじんましんは数時間で消えてしまうことが多いので自然に治ってしまうこともあります。じんましんができた時には分泌されたヒスタミンに対して抗ヒスタミン剤を投与します。また肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質を分泌抑制する抗アレルギー剤が役に立つこともあります。原因の分からないじんましんにたいしては一般に物理的な刺激、熱すぎる風呂やからだが温まる食事なども避けます。引っかき傷は人工的なじんましんを悪化させることや皮膚の細菌感染の原因になることがありますから引っかかないように注意します。

2005年10月18日掲載

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