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 現在、肝炎ウイルスとして知られているのはA型からE型まで5つのウイルスですが、この中で比較的よくわかっているのはA型肝炎とB型肝炎です。そしてこの中で母子感染を起こすのはB型肝炎とC型肝炎です。B型肝炎ウイルスに対してはワクチンがあり、一定の母子感染予防法が確立されていますが、C型肝炎ウイルスにはワクチンがなく、母子感染の予防法についてもまだ確立されたものはありません。B型肝炎もC型肝炎も慢性肝炎、肝硬変、肝ガンの原因ウイルスとして重要視されています。A型肝炎は衛生状態の改善にともなって日本で自然にかかることは少なくなっていますが、感染様式に特徴があり現在でも大切な肝炎の原因のひとつに違いはありません。今月は一般に良く知られたA型肝炎とB型肝炎、とくにB型肝炎の母子感染予防についてお話しをしたいと思います。

 A型肝炎は患者の糞便中に排泄されたウイルスで汚染された水から経口感染します。汚染された水や生野菜、汚染された海水に棲むカキなど貝類を生で食べると感染します。また家族内感染を起こすこともあります。上下水道が完備した日本ではA型肝炎は激減しており、現在50歳以下の日本人のほとんどはA型肝炎に対する抗体を持っていません。しかし発展途上国など上下水道が整備されていない所では、汚染された水によるA型肝炎は珍しいものではありません。したがって免疫を持たない若い人達が外国旅行でA型肝炎にかかることがあります。

 A型肝炎の潜伏期間は2~6週間とされますが、約30日の潜伏期間の後に発熱、全身倦怠感、食欲不振などが出現した後、吐き気や腹痛などが加わってその後に黄疸が出現します。その後、自覚症状は回復に向かいます。黄疸出現前後10日間くらいがもっともウイルス排出が多く感染源になります。子どものA型肝炎は一般に軽いことが多く黄疸が出ない場合もありますが、そのために診断が遅れて感染源になることがあり注意が必要です。A型肝炎はB型やC型肝炎と異なり輸血など血液を介する感染の心配はありません。

2005年4月12日掲載

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