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 一般にヘルペスは口の周囲に小さな水泡が見られる疾患ですが、これは単純ヘルペスです。ヘルペスウイルスには単純ヘルペスのほかに帯状疱疹(水疱)ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス、突発性発疹ウイルスが知られています。それぞれ乳幼児期にかかることが多い疾患で、臨床的には重要なウイルスです。今月はよく見られる単純ヘルペスウイルス感染症の症状や、重篤な疾患である新生児ヘルペスやヘルペス脳炎などについてお話ししたいと思います。

 単純ヘルペス感染症は口周囲や外陰部に小水疱を形成するウイルス疾患で1型と2型の2種類が知られています。成人では1型は口周囲に2型は陰部ヘルペスとして反復して出現します。しかし初感染の新生児や乳幼児にとっては重い症状を引き起こすことがあります。とくに新生児が分娩中に母親から感染して起こる新生児ヘルペスは死に至ることもある怖い病気です。またヘルペス脳炎も死亡率が高い病気でたとえ治っても後遺症を残すことが多い疾患です。

 普通、乳幼児が単純ヘルペスに初めてかかると口内歯肉炎を起こします。突然の高熱で発病し、1~2日すると口内炎と歯肉が腫れて真っ赤になります。口唇の周囲に小水疱性の発疹も見られます。これがヘルペス性口内歯肉炎です。発熱や口内炎症状は通常、7~10日くらいの経過で自然に治りますが、高熱と口内炎や歯肉炎のために食物の摂取が出来なくなりますから、体力の消耗が激しく脱水症を起こし、時には輸液や入院が必要となることもあります。

 皮膚や口粘膜から侵入したヘルペスウイルスは侵入局所で増殖した後、神経を伝って神経節細胞に移行し、神経節細胞の細胞質内にDNAの形で潜伏感染します。疲労や外傷、免疫状態の低下など宿主のストレスによって、潜伏したヘルペスウイルスは再び活性化し、神経を下降して皮膚粘膜で水疱を形成します。ヘルペスは何度でもかかる病気ですが、再発時には局所の水疱が主症状で初感染時のような重い症状を示すことはありません。

2005年2月8日掲載

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