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 日本脳炎は現在日本ではあまり見かけなくなりました。しかし2005年5月末に厚生労働省が日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨を中止することを決めてからは接種対象の子どもたちはほとんど日本脳炎ワクチンを受けていません。

 その結果、日本脳炎に対する免疫を持つ子どもの割合がだんだん少なくなっていると考えられます。そのために最近では子どもの日本脳炎がいつ発生してもおかしくない状態になっています。今月は日本脳炎についてお話します。

 日本脳炎は蚊で媒介されるウイルス性の神経疾患です。中でもコガタアカイエカがもっとも重要な蚊であるとされます。

 豚は日本脳炎ウイルスを持った蚊に血を吸われるときに感染してウイルス血症を起こします。これが日本脳炎ウイルスの供給源になります。このウイルスは、蚊と豚の間で感染を繰り返すことで自然界の中で生息しているのです。

 このウイルスを持った蚊が人の血を吸うと人に感染して、その一部が日本脳炎を発病するのです。日本でコガタアカイエカが大量に発生するのは6~9月ですから、この時期に多くの日本脳炎患者が発生するのです。

 日本では1960年代までは年間数千人の患者が発生していました。1992年以降は年間10名未満の発生にとどまっています。

 しかし日本脳炎ウイルスは日本、中国、韓国など東アジアからベトナム、タイ、フィリピン、インドネシアなど東南アジア、インド、パキスタンの一部までの西アジアからオーストラリアの一部まで生息することが確認されています。これらの地域では年間2万人をこえる脳炎患者が発生しているものと推測されています。

 日本で日本脳炎の発生が急激に減少した理由には予防接種の普及、コガタアカイエカが生息する水田の減少、都市部で豚の飼育が減ったことなどが挙げられます。しかし今後、日本脳炎ワクチン接種者が居なくなれば、ウイルスに対する感受性者が増加することによって日本脳炎患者の発生が増加する可能性があり注意が必要です。

2007年5月8日掲載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.