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 今月は感染性胃腸炎、とくにカンピロバクターやサルモネラ菌による胃腸炎・腸炎についてお話してきました。細菌感染による胃腸炎は全身症状をともなうことが多く注意が必要です。今回はそのなかでもO-157で有名な病原性大腸菌についてお話します。

 病原性大腸菌の中には腸管出血性大腸菌を代表とするいくつかの菌型があります。その中でベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌はもっとも激しい症状を示します。

 ベロ毒素は出血傾向や腎臓障害を起こして急性腸炎とともに全身症状、とくに腎不全や神経症状をひき起こすもので、赤痢菌が産生する毒素と同じものです。ベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌の血清型による分類でO-157はそのうちのひとつです。

 病原性大腸菌は一部のウシの腸管に存在します。処理過程で内臓や食肉部分に菌がつくことがありますから、生レバーや生肉をそのまま食べると感染することがあります。

 病原性大腸菌を経口的に摂取すると20~70%が発病します。感染しても症状がまったく出ない場合から、軽い下痢、激しい腹痛、頻回の水様便、著しい血便とともに重症の合併症で死亡する、までさまざまです。

 潜伏期間は3~5日間です。激しい腹痛をともなう水様便から血便になります。発熱は軽度で、1~2日で血便になりますが、次第に血便の程度がひどくなって真っ赤な水様便が肛門からふきだす状態になります。

 溶血性尿毒症症候群または脳症などの重症合併症は下痢が見られて、数日から2週間以内に、6~7%の人に発病し、死に至る場合は1~5%と言われます。

 激しい腹痛や血便、高熱、意識状態の変化、尿量の減少、血尿、蛋白尿、血小板数の減少などは重症化の兆候です。

 また5歳以下の小児や高齢者は、高熱の持続や早期の腎不全、脳の出血や梗塞など重症化しやすいと言われます。牛生肉や生レバーなどの摂取には慎重でなければなりません。

2007年8月22日掲載

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