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【答え】 女性のびまん性脱毛症 -発毛・育毛剤外用で効果-

徳島大学医学部 皮膚科 広瀬 憲志

 女性の薄毛の相談のようです。脱毛症かどうかは診てみないと分かりませんが、ここでは女性のびまん性脱毛症について説明します。一般に、女性のびまん性脱毛には<1>加齢による頭髪の変化<2>女性の男性型脱毛症<3>休止期脱毛―の3つがあります。それぞれの特徴や症状について説明します。

 まず、<1>の加齢による頭髪の変化です。頭部全体の毛が透けて地肌が目立ち、一本一本が細く、短くなります。その結果、患者さんは「頭全体の髪のボリュームが減り、毛髪が頭に張り付くようになってきた」と訴えるようになります。更年期前後に始まることが多く閉経後に目立ってきます。

 次に、<2>の女性の男性型脱毛症です。男性ホルモンの影響で、頭頂部から前頭部にかけての太長い毛髪が細短い毛(軟毛)に変わるのが特徴です。多くは三十代前半から変化に気付くといわれていますが、更年期前後からは<1>の要素も加わってくるため、よりはっきりとしてきます。

 そして<3>の休止期脱毛です。これはさらに、ア急性休止期脱毛イ慢性びまん性休止期脱毛ウ慢性休止期脱毛の3つのタイプに分かれます。

 (ア)の急性休止期脱毛は、精神的ストレスや高熱、外科手術、急激な栄養障害、大量出血、出産、ホルモンの変化(ピルの内服や中止)などで起こる急性の脱毛です。太い毛が抜けやすく、数か月で急激に頭部全域の毛髪が薄くなります。原因を取り除くと改善します。

 (イ)の慢性びまん性休止期脱毛は、慢性の全身疾患や栄養不良状態(貧血・極度のダイエット・内分泌疾患・膠原(こうげん)病など)、薬剤などの影響で、六カ月以上のゆっくりした期間で、頭部全域の毛髪密度が徐々に低下します。これも原因が取り除かれると回復する可能性が高いです。

 さらに、(ウ)の慢性休止期脱毛は、加齢変化とするには若すぎる女性に、いつの間にやら頭頂部から側頭部で太長い毛の密度が低下するのが特徴で、軟毛は増えません。症状はイの慢性びまん性休止期脱毛と同じですが、原因が不明なものです。

 このように、女性のびまん性脱毛症にはさまざまな特徴があります。原因が不明な場合は切り札となる治療法はありませんが、発毛・育毛成分ミノキシジル(商品名リアップレディ)を女性の薄毛に外用すると、毛髪密度の増加とともに毛が太くなることが明らかにされています。

 内服治療については、保険適応となる薬はありません。男性の男性型脱毛症の内服治療薬であるフィナステリドは副作用の影響で、妊娠の可能性のある女性は使用できません。

 さて、「若い女性で頭頂部を中心に全体に薄くなっている」との質問の内容から推測すると、<2>の女性の男性型脱毛症か、<3>の休止期脱毛のうちイの慢性びまん性休止期脱毛とウの慢性休止期脱毛などが考えられます。

 ただし、薄毛を心配する人の中には病的なものではなく、治療を必要としない人も結構います。また、前に述べたように、時に鉄欠乏性貧血や内臓疾患などが隠れている場合もあるので、一度専門の皮膚科医に相談されてみてはいかがでしょうか。

徳島新聞2008年4月6日号より転載

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