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 麻疹は誰でも知っているウイルス感染症ですが、予防接種のおかげで一般にあまり見かけなくなりました。しかし麻疹を経験したことのある人ならその怖さをいやと言うほど知っているでしょう。ところが最近では麻疹の怖さを知らない人がいたずらにワクチンの副作用を怖がって、ワクチンを接種しない人がいるようです。

 麻疹は子供の頃にかかる病気で一度かかれば免疫ができて二度とかからないと考えられていました。しかし、このような常識が最近では通用しなくなりました。つまり、誰でもかかる可能性はありますが、誰もが無事に治るというわけではなく、また、ワクチンでつけた免疫では、一生かからないという保障も怪しくなってきたからです。

 麻疹はウイルスが鼻や咽喉の粘膜から侵入して10~12日くらいの潜伏期間をおいて発病します。その症状は高熱と激しい咳や鼻水、結膜炎、下痢などを伴います。3日位すると口腔粘膜にコプリック斑と言われる斑点が出現し、この後に麻疹特有の発疹が頚部から出現し顔や身体全体に拡がっていきます。麻疹の発疹は色素沈着を残し、消失するのに1週間くらいかかります。麻疹の咳や鼻水などは一般の風邪症状に比べるとはなはだしく激しいものです。発熱も高熱で約1週間近く続くことから脱水症を起こすことも珍しくありません。また肺炎や気管支炎など呼吸器系の、さらに中耳炎などの耳鼻科的な合併症を起こすこともあります。まれに脳炎を合併することもあります。このような激しい症状を示す麻疹には絶対にかからせてはいけません。

 麻疹ワクチンが定期予防接種として行われるようになって麻疹の流行は少なくなってきましたが、最近あちこちで麻疹が流行しているとのニュースに接することがあります。ですから1歳を過ぎたら出来るだけ早く麻疹ワクチンを受けることが大切です。

2002年1月8日掲載

 分娩前に妊婦さんが小児科医と接触する機会はあまりありません。母親教室で新生児や乳児の育児について指導にあたるのは産科医や助産婦、栄養士が多く、実際に子供によく見られる症状や状態についての説明や、急病時の病院の掛かり方、予防接種・乳児健診の受け方などについて、出産前に小児科医から直接指導を受ける機会はほとんどありません。反対に新聞・雑誌、テレビやインターネットなどを通して病気や子育てに関する情報は有り余るほどはんらんしています。我々小児科医でも、その情報がどこから出てきたのか判断に迷うことがあります。また、10年、20年前に薦められてきた育児法に問題があるとされることもあります。一時薦められていたうつ伏せ寝についても、以前はぐっすり寝てくれる、頭の形が良くなるほどと推奨されていましたが、最近では乳児突然死の危険性が高くなるとされ避けるように指導されています。母乳についても母親の食事内容によっては食物アレルギーの原因になる場合もあり、それぞれの個人の体質や家庭の事情、家庭環境を十分に考えて個別に指導する必要があります。

厚生労働省の小子化対策のひとつであるプレネタイルビジットは徳島市のモデル事業として10月1日から来年3月31日まで行われています。出産を控えて育児に対して不安を抱えている妊婦さんと小児科医が接触する機会を作り、、妊婦さんの分娩後の不安を少しでも軽くしようとする試みです。分娩を控えた人の不安はその人によってさまざまです。夫や姑、上の子供など家族のこと、出産後の家庭や仕事のこと、急病の対応、母乳や食物のことなど次々不安になることがあります。育児に対する不安感や負担感が妊婦さんのストレスになって虐待などにつながっては大変です。徳島市のこのモデル事業が軌道に乗って、やがては徳島市以外の地域でも、いつでも利用できるシステムに発展してくれることを願ってやみません。

2001年12月掲載

 今年もだんだん寒くなってきて、そろそろ風邪を引きやすい季節になってきました。風邪の中でも最も怖いのはインフルエンザです。体力のないお年寄りや乳幼児が普通にインフルエンザに罹るだけでも大変です。鼻水や咳が出始めると急に39度以上の高熱が出て、咽喉の痛みや倦怠感など風邪症状が現れ数日間続きます。その上に下痢などの消化器症状や筋肉痛・関節痛を伴います。循環器や神経に基礎疾患を持つ人や体力・抵抗力のないお年寄りや乳幼児には大変な負担になります。さらにインフルエンザが怖いのは幼弱な乳幼児に脳炎・脳症を引き起こす可能性があることです。インフルエンザ脳炎・脳症は、インフルエンザの発病から1~2日以内に痙攣重積症や意識障害で発病し、予後の悪い病気です。もし助かっても神経系の重篤な後遺症が残ることがあります。
 さて不幸にもインフルエンザに罹ったときの治療ですが、幸いにも最近はインフルエンザに有効な薬剤が開発されています。早い時期に正確な診断をつけて使用すると有効だと言われています。しかしウイルスの型によっては効果がないものや、カプセルや吸入薬など大人用の薬しかないものは、乳幼児には使いにくいものです。また発病早期に正確にインフルエンザの診断がなされなければ、これらの薬剤も使用するチャンスを失ってしまいます。

 いずれにしてもインフルエンザに罹ってから治療をするよりは、予防(ワクチン)が一番です。ワクチンと言うと効果は、副作用は、値段はと心配する声が上がりますが、脳炎・脳症が発病してからでは遅いのです。なぜ脳炎・脳症が発症するのかは明らかではありませんが、ワクチンをしていた人の中で脳炎・脳症に罹った人もは少なかったと言われています。誰がインフルエンザに罹っても困ります。お父さんお母さんが罹ると子供の世話は誰がするのでしょう。免疫のない乳幼児、体力の落ちたお年寄りなど誰か一人が罹ると家族中でうつし合います。ワクチンをする場合には子供だけでなく家族全員で受けることが大切です。

2001年11月掲載

 今年の暑い夏もやっと終わって涼しい風が吹き始めました。夏の間、裸同然の薄着で寝ていた子供達が朝起きた時に手足が冷たくなり、鼻水やくしゃみが出たりお腹の調子が悪くなっていたりします。ひどい時には、発熱などの本格的な感冒症状を起こすことも珍しくありません。

 私達の体温は自律神経によってほぼ一定に保たれているように見えますが、実際には活動している昼間には高く、夜間睡眠中には低くなることが知られています。つまりヒトの体温は外の環境温度と同じように変動し、夕方に最も高くなり、夜間入眠に伴って次第に低下し、夜明け前に最も低くなるということです。

 ではなぜ身体が冷たくなると風邪をひきやすいのでしょう。免疫能の低下と密接な関係があると考えられます。風邪の原因ウイルスや細菌に侵された時、免疫能が低下していれば風邪に罹り易いことでも判るでしょう。さらに早朝には、ストレスに反応して変動するホルモンの代表であるACTHやコーチゾールの分泌も一日の中で最も低下しています。これらの内分泌機能の変動は体温とよく以た変動をしますが、まったく同じというわけではあリません。私達の身体は神経支配により免疫系、内分泌系で外界からのストレスに備えているのですが、幼弱な乳幼児ではこれらの防御機能も完全なものとは言えません。最も体温の低下する早朝夜明け前ばかりではなくでも、昼間の時でも簡単に低体温になることがあります。エアコンのよく効いた室内での昼寝や風呂上がりの湯冷めで体調をくずすことからもおわかりでしょう。身体の冷えは免疫能の低下につながることを知ってよく気をつけましょう。

2001年10月2日号掲載

 健康維持には適度な睡眠は不可欠だ。【寝る子は育つ】と言われているように、特に子どもの健やかな心身の発育のためには、良質な睡眠をとることが大切である。しかし、最近の傾向として安眠が出来なかったり、睡眠時間が不足している子ども達が多くなっている。

 乳児期にみられる睡眠障害に「夜泣き」がある。これは大変多くみられる現象で、半数以上の親が悩まされたことがある、といった調査結果もあるが、ほとんどは成長とともにみられなくなる。対策としては昼間の遊びや就寝前の哺乳に配慮し、ゆったりとした気持ちで保育することである。とりわけ「夜泣き」に過剰に反応しないことが「夜泣き」を長引かせないコツである。当然のことながら、「いつもと違う泣き方」の際には発熱、痛み、かゆみの有無や室温、湿気、着衣の状況が適切かどうかの確認が大切。特に激しい腹痛を伴う腸重積は「いつもと違う泣き方」の代表的疾患であり、気を付けなければならない。

 睡眠時無呼吸症は中年以後に多い病気だが、扁桃腺が肥大している子どもにもみられることがある。重症の場合努力呼吸、無呼吸により体力の消耗や低酸素血症が起こり、睡眠不足や身体および知的発育の遅れの原因になる。子どものいびきが大きかったり、吸気時に胸部が陥没しているようであれば、かかりつけ医に相談しよう。

 最近の日本社会はますます夜型となっており、このため多くの子ども達が睡眠不足による多彩な心身の異常や変調を来していると言われている。いまこそ「早寝早起き」といった忘れ去られかけた習慣をもう一度見直す必要があるのではないだろうか。

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