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【質問】右前腕中央にこりこりとした感触

 30代後半の男性です。右腕の肘と手首の真ん中辺りにビー玉サイズのしこりがあります。20歳くらいのときに気付きましたが、こりこりとした感触があるだけで、特に痛みはないため放置していました。最近、知人に腫瘍ではないかと言われ、急に不安になってきました。このしこりは取った方がいいのでしょうか。もし取るなら、何科を受診したらいいのか教えてください。

 

あなん戸田皮膚科医院  松本和也 先生

 【答え】整形や形成外科受診を

相談によると、腕の皮膚の下に何かできもの(しこり)があるようです。診察する過程は、しこりが表面の皮膚とくっついているか、くっついていないかによって二つの道に分かれます。しこりの上の皮膚を上下左右に動かして、皮膚としこりが一緒に動くと「くっつき有り」、皮膚がしこりと関係なく自由に動くと「くっつき無し」となります。

 「くっつき有り」の場合、「粉瘤(ふんりゅう)」や「石灰化上皮腫」などの良性腫瘍だと考えられます。粉瘤は垢(あか)袋とも言われる皮膚下にできる皮膚の袋で、中には角質や皮脂といった老廃物が入っています。石灰化上皮腫は、髪の毛に似た成分でできた硬い灰白色の塊です。

 自然に無くなることはありませんが、皮膚直下の浅い部分にあり、局所麻酔による手術で簡単に取ることができます。放置しても、悪性化してがんになることはほとんどありません。ただ、表面の皮膚が赤く腫れたり、化膿(かのう)したりすることもあり、切除する人が多いようです。皮膚科や形成外科で治療を受けられます。

 「くっつき無し」の場合は「ガングリオン」や「脂肪腫」、「脂腺嚢腫(のうしゅ)」などの良性腫瘍が考えられます。ガングリオンは関節や腱(けん)の周辺にできる袋で、透明なゼリー状の物が入っています。脂肪腫は黄色い脂肪の塊、脂腺嚢腫はマヨネーズ状の物が入った袋です。

 このうち、質問にある「こりこりとした感触」を最も感じやすいのはガングリオンです。困ったことに、ガングリオンは、これら中で一番治療が難しいとされています。

 脂肪腫と脂腺嚢腫ならば局所麻酔の手術で取れます。しかし、ガングリオンは全身麻酔をかけ、しこりの周りの神経を確認できる装置(神経刺激装置)を使って神経を傷めないように避けて取ります。手術前にガングリオンかどうかを確認するには、CTやMRI(磁気共鳴画像装置)などの画像診断が必要です。

 ガングリオンの可能性もある「くっつき無し」であれば、<1>CTやMRIが撮影できる<2>全身麻酔ができる<3>神経刺激装置がある-といった三つの条件を満たす施設を受診することをお勧めします。一般にはこれらの情報が分からないと思いますので、まずは近くの整形外科や形成外科を受診し、条件を満たす病院を紹介してもらうのがよいでしょう。

 CTなどでガングリオンと診断されても、現在は痛みなどの症状がないようなので、切除するかどうか判断が難しいところです。手術をすることで神経を傷めてしまう危険性も含めて、担当医師とよく相談してください。

 今回は実際の診療でよく見かける症例だけを挙げていますので、腕のしこりが他の良性腫瘍のケースもあります。また、可能性はかなり低いですが、悪性でないとは言い切れません。一度、整形外科や皮膚科、形成外科などを受診してみてはいかがでしょうか。

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