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【質問】足指の付け根に激痛

 50代の男性です。夜中に突然、足の親指の付け根に激痛が走りました。病院に行くと「痛風」と診断され、酒の飲み過ぎが原因ではないかと指摘されました。高尿酸血症の状態が続き、痛風になったようですが、処方された薬と食事療法、運動で改善するのでしょうか。

クリニック 田中正喜 先生


 
 【答え】薬で尿酸値抑え改善

 痛風と聞くと「赤く腫れた足に、風が当たっただけで激痛が走る、こんな痛みに必死に耐えているお酒飲みの人」というイメージを持つ方も多いと思われます。痛風は昔、ぜいたく病、王様病とも呼ばれ、アレキサンダー大王、フランスのルイ14世も痛風に悩まされていたといわれています。

 痛風の原因は過剰な尿酸が関節内に蓄積され、それが結晶化し関節の炎症を引き起こして発症するので、尿酸のもとになるプリン体(細胞の核に含まれるDNAの成分)を多く含む肉類、高タンパク質、高カロリー食を摂取する人、すなわち美食家に起こりやすいのも納得できます。

 飲酒量が多いと、アルコールが腎臓での尿中への尿酸排泄(はいせつ)を阻害するので、さらに痛風を起こしやすくなります。特に、ビールはプリン体を多く含み要注意です。

 痛風発作の起こる場所は、質問の方のように、足の母指の付け根に起こりやすく、この部分が赤く腫れ、痛みが生じ、血液の尿酸値が上昇していれば痛風の診断は比較的容易にできます。しかし、足関節部、膝関節、肩関節、腰関節などに痛風発作が生じることもあり、診断に注意を要する場合があります。

 私自身も50歳ごろ、左肩の疼痛(とうつう)に悩まされ五十肩と思い込み、治療していましたが一向に治まらず、しばらくして痛風の治療を始めたら、痛みが潮を引くように治っていったという苦い経験があります。

 尿酸値は血液1デシリットル中7ミリグラム以下が正常で、この値が高くなるほど、痛風発作を起こしやすくなります。しかし、尿酸値が9以上になっても痛風発作が起きない人もいるし、正常値以下でも発症することがあります。

 痛風の治療は、尿酸値を下げることが基本になりますが、おいしい食べ物があふれ、飲酒の機会も多い現代において、それらを制限することは至難の業です。

 治療薬として、自分の体で尿酸を作りすぎている人には尿酸産生抑制剤(アロプリノールなど)が効果的であり、飲酒量が多く尿酸の排出が低下している人には、尿酸排出促進剤(ベンズブロマロンなど)が効果的です。これらの薬剤を使用することによって、尿酸値は低下し痛風は改善していきますのでご安心ください。

 ただし痛風発作時、疼痛が強い時は、尿酸値を急激に低下させると、逆に疼痛が悪化することがありますので、発作時は痛みと炎症を軽減することが主になります。また、人によっては、尿酸降下剤を使用することによって、重篤な肝機能障害を引き起こす場合や、皮疹(ひしん)などの副作用が現れることがありますので注意が必要です。

 副作用がない場合は、続けて服用しても問題なく、お酒を飲むことも可能です。使用する薬の種類、薬の量は、痛風の状態によって、かかりつけ医が調節してくれると思います。飲酒が止められない人は、これらの薬剤を服用し続けることで、痛風は防げますが、発作が起こらないためかえって飲酒量が増えていく場合がありますので注意が必要です。

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