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【質問】 治ってもまた水泡が

 28歳の女性で、職業は教員です。20歳のころ、ガスコンロを洗っていて右手の指に小さな傷ができました。その後、右手の中指に小さな水泡(すいほう)ができ、かゆくて裂くと透明の液が出て、今度は痛くなります。病院では「手の湿疹」と診断され、「副腎皮質ホルモン軟膏」をもらって塗っていました。でも、一時的に良くなるものの、水疱ができて皮がむけ、とても痛く、治ったと思ったら、また水疱・・・の繰り返しです。最近では人差し指、中指、薬指に広がっています。夏が特にひどく、指先の皮がひび割れ、厚くなって指紋もなくなり、物を持ったり触ったりした時の感触も変わってきています。一生、この手の症状と付き合わなければならないのでしょうか。



【答え】 手の湿疹 -手を洗い保護が有効-

徳島県立中央病院 皮膚科部長 山本 忠利

 お悩みの症状は、手の湿疹皮膚症候群の一つと思われます。湿疹皮膚症候群は、主として発疹の形や皮膚症状から次のように分類されます。

 1.【突発性汗泡(かんぽう)】 汗泡とは、水虫の時にできるような小さな水疱のことで、若い男女に多く、かゆみがあまりないので湿疹かどうかの判断がつきにくいのが特徴です。

 2.【汗泡状湿疹】 手の甲に貨幣状の湿疹のようなものができるか、指に小さな水疱が集まっている湿疹です。夏に悪化するのが特徴です。

 3.【手指皮膚症候群】 急性の接触皮膚炎と慢性の家婦湿疹、同じく慢性の職業性皮膚炎があります。

 4.【胼胝(ベンチ)状亀裂性湿疹】 ひび、あかぎれの状態です。

 5.【進行性指掌(ししょう)角皮症】 ホルモン異常によるものと言われていましたが、最近はさまざまな原因が指摘されています。

 これらの手の湿疹には、一次刺激性もの、アレルギー性のものなどさまざまな原因があります。一次刺激性の皮膚炎としては、強い酸やアルカリ、昆虫などで起き、刺激を受けると大抵の人がかかります。

 アレルギー性の皮膚炎としては、ある特定の物質が原因となり、特定の人に発生します。最近は、ピアス、指輪などのほか、虫歯などの治療で使う歯科金属の金属アレルギー性皮膚炎も多いようです。洗剤やチョークなど、特定の物質を長く使用してできる蓄積性の障害もあります。一度、金属貼付(ちょうふ)試験=パッチテスト=を行うとよいでしょう。

 このほか、慢性へんとう炎や蓄のうがある人にできやすい掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、真菌(しんきん=カビ)が原因でできる手の白癬(はくせん)、カンジダ症などがあります。皮膚科で検査をして、原因をよく調べてから治療をするとともに、日常生活での注意も必要です。

 現在は、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤を飲んだり、副腎(じん)皮質ホルモンを塗ったりする治療がよく行われています。手の角質層は厚いので、副腎皮質ホルモン剤の外用による副作用はほとんどありません。

 手の湿疹のケアは、原因となるものを遮断することが一番です。できるだけ手を洗って薬を塗り、木綿の手袋などで保護するのもよいと思います。

 冬はワセリン、保湿クリームなどで保護することも必要でしょう。

徳島新聞1999年1月10日号より転載

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