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【質問】 汗と冷えの養生法は

 69歳の農業をしている女性です。汗と冷えに困っています。還暦を過ぎたころから、軽作業をしても、夏はもちろん、冬でも背中だけ汗をびっしょりかくので、タオルを入れています。そのくせ、手のひじから肩にかけてと、太ももとふくらはぎは氷のように冷たく、サポーターやカイロが毎日離せません。汗をかくところも冷えるところも、すべて体の後ろ側ばかりです。特に、ふくらはぎは入浴してもしんが入ったように冷たく、硬く感じます。10月から4月までは電気毛布がないと眠れません。整形外科では血液の循環が悪いといわれましたが、良くなりません。何科で受診したらいいでしょうか。また、家庭でできる養生法を教えてください。なお、還暦のころから、過労で変形性腰椎脊椎(ようついせきつい)症になっています。汗と冷えはこれに関係があるのでしょうか。



【答え】 変形性脊椎症 -自律神経が深く関係-

ほりべ整形外科院長 堀部 和好(徳島市南昭和町1丁目)

 <1>季節に関係なく、背中に汗をかく<2>その反対に、肩からひじにかけての後ろ側と、太ももの後ろからふくらはぎにかけて冷たく、ふくらはぎは入浴してもしんが入ったように冷たく硬く感じる-。以上の2つの症状についてお答えしたいと思いますが、変形性脊椎症以外には診察データがありませんので、十分な説明にならないかもしれないことを、初めにお断りしておきます。

 <1>の症状の汗は、皮膚の汗腺(せん)から分泌されますが、これを支配しているのは自律神経です。この自律神経に問題を起こす原因を分析すると、末しょう性、全身性(糖尿病などの疾患)、中枢性(発熱など)、心因性などがあります。質問の方は背中に限っているので、末しょう性と心因性が考えられます。

 末しょう性のものの可能性としては、変形性脊椎症に伴う奥深い痛みが自律神経に作用して、脈拍が少なくなったり、障害のある神経支配部位の血管拡張があったりして、発汗の症状を引き起こしたと考えられます。奥深い痛みは、痛みに敏感な深部組織の刺激によって起こるもので、その部位がはっきりせず、刺激が強く長く続けば広範囲に影響することもあるといわれています。

 なお、心因性の可能性もありますが、専門外なので最後に簡単にお話しします。

 <2>については、血液の循環が悪い場合が考えられます。それには、〈A〉動脈に障害がある場合(例・閉そく性動脈硬化症、糖尿病性血管炎)、〈B〉末しょう神経、自律神経に問題がある場合(例・椎間板ヘルニア、変形性脊椎症)、〈C〉心因性の場合-などが考えられます。

 〈A〉の場合は、手と足の先の方に冷感、痛み、皮膚の色調変化が強く見られます。また、症状は、一般に進行して悪くなり、動脈が触れにくくなったり、皮膚にかいようをつくったりします。このような場合は、かかりつけの医者で診断を受け、場合によっては専門医を紹介してもらうとよいでしょう。

 〈B〉の場合を考えてみましょう。実は変形性脊椎症という病名は、レントゲン所見の診断名です。つまり、年齢的な変化(加齢現象)が背骨に見られるということで、脊柱や、その周辺組織にも同様の変化が予想されるという診断名です。

 <1>と正反対のように見える症状ですが、同じ変形性脊椎症の病名で両方の症状が起こります。つまり、交感神経(自律神経)の刺激から血管収縮を起こし、冷感とか、筋痙(けい)縮を支配域の皮膚や筋肉に引き起こすことが考えられます。もう一度整形外科医の診察を受けてください。

 最後に、発汗や冷感は自律神経が深く関係しています。自律神経は心理的な影響を受けやすく、暗示や催眠術、心理的影響により、皮膚温の変化がサーモグラフィーで証明されています。つまり、心理的な影響により、異常発汗、冷感が起きたり、その症状を強くしたりすることが考えられます。原因がはっきりしない時は、心療内科の診察を受けてください。

 原因がはっきりしてから、家庭での養生法を教えてもらってください。

徳島新聞1999年6月13日号より転載

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