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【質問】 夜間に見える虹の輪

 75歳の男性です。昨年末、両目の白内障手術をしたところ、よく見えるようになりましたが、夜間、遠くの電灯や月、星など光る物体を見ると、その周りに虹(にじ)のような光の輪ができます。医学書を読むと、「虹視(こうし)」といって、緑内障の症状の特徴だとありますが、眼科では、眼圧、視野ともに異常なしで、心配ないとのことです。しかし、夜、車を運転するとき、前方から来る車のライトがやたらと輝き、虹の輪が後へ後へと続きます。センターラインもはっきりと見えず、危なくてたまりません。この症状は、術後半年を過ぎてもいっこうによくなりません。なぜこんな現象が起こるのですか。時間がたてば治りますか。緑内障となり、失明することはありませんか。治療法はないですか。



【答え】 白内障手術 -目薬でまぶしさ軽減-

盛眼科医院 院長 盛 重知(徳島市寺島本町西2丁目)

 現在の白内障手術は、白内障で濁った水晶体を取り除き、水晶体の代わりに眼内レンズと呼ばれる人工の水晶体を挿入する方法が一般的に行われています。

 この眼内レンズは、〈図〉の水晶体の部分に挿入されます。水晶体の代わりの役目をする物で現代の白内障手術に不可欠ですが、元の水晶体と異なり、ほとんど透明です。そのため、元来水晶体でカットされていた光も透過させてしまい、手術後はまぶしさの増加、色の感覚の変化などが生じることがあります。

 さて、質問の白内障手術によって視力の改善はあったにもかかわらず、夜間に光の輪が見え、運転がしにくいとのことですが、このような現象が起きるのは瞳孔(どうこう=ひとみ)の大きさが周囲の明るさによって変化するために生じます。

 つまり、夜間は周囲が暗いため、瞳孔が開き、より多くの光を網膜が受けることになります。眼内レンズを挿入している目では、本来人間の持っている水晶体より多くの光が透過されます。さらに眼内レンズの直径は水晶体より小さいため、瞳孔が開くことによって、挿入してある眼内レンズの縁に光が反射し、一層散乱されて、光の輪が見えたり光がやたらと輝いたりするためと推測されます。

 既に手術を受けられてから半年たっており、残念ながらこの現象がなくなることはないと思われます。

 この光が虹の輪のように見えて、緑内障になることをも心配しておられるようですが、眼圧、視野ともに異常がないとのことから定期的に術後の検診を受けていれば心配ないでしょう。

 夜間のまぶしさの解決法ですが、前記のように眼内レンズを挿入された目においてこの問題を根本的に治すことは困難です。しかし、ひとみを縮める目薬を夜間運転する前に使用することによりまぶしさをかなり軽減することができるかもしれません。一度主治医の先生に相談されてはいかがでしょうか。

 白内障手術は、手術時間が短縮し、日帰り手術も可能になるなど患者さんの負担が軽減されています。手術件数は増加の一途をたどり、昨年わが国で約六十万眼の手術が施行されました。

 これは最近の白内障手術がいわゆる視力を失った人の開眼手術から、日常生活における視機能の質の改善を求める手術へと目的が変化していることも大きな要因と考えられます。

 しかし、いったん手術を受けると元の生理的状態に戻すことは不可能なため、手術を受ける前にご自分の日常の生活スタイルを医師によく伝え、それに適した眼内レンズを挿入してもらうことが重要です。また、両眼の手術を受けるときは一方の手術後、少し様子を見てからもう一方の手術を受けるのもよいでしょう。

徳島新聞1999年6月27日号より転載

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