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【質問】 ステロイド剤の副作用心配

 50代の主婦です。3年ほど前から頭の所々にかさぶたができるようになりました。耳の後ろにも時々できます。皮膚科で「乾癬(かんせん)」と言われました。治りにくい病気だそうです。副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤の塗り薬をもらいましたが、これは強い薬だと、以前、新聞で読みました。ずっと塗り続けても副作用がないか心配です。皮膚科の先生は、あってもごくまれとのことでしたが気になります。この病気のことと、薬の副作用について教えてください。



【答え】 乾癬の塗り薬 -使用法守れば安全

阿南共栄病院 皮膚科部長 原田 種雄

 乾癬は8,000以上ある皮膚疾患の1つで、診断は比較的容易ですが、治りにくい病気です。長年、軽快、再発、悪化を繰り返しますが、自然に治る例もあります。

 普通は全身に散在する赤い斑点(はんてん)が特徴ですが、あなたのように頭部や頚(けい)部に症状が限られる例もあります。

 乾癬は遺伝子に支配されている病気と考えられています。今のところ乾癬を完治させる治療法はなく、治療目標は皮膚症状を抑えることにあります。高血圧や糖尿病の場合と同じで対症的治療です。

 治療法として<1>光線療法<2>免疫抑制剤<3>ビタミンD3外用剤<4>ステロイド外用剤―などがあり、いろいろ組み合わせて治療します。どのようなときに自分の乾癬が悪化するかに気づけば、日常生活が改善でき、皮膚症状のコントロールがしやすくなります。

 乾癬にかかっている人が社会的責任を果たし、快適な生活を保つためには、アトピー性皮膚炎と同じく、家族や友人、職場の人たちの理解と協力、社会的配慮、支援が必要です。

 次にステロイド外用剤の使い方や副作用について述べます。外用剤は内服薬や注射と違って1日に使う量の指示がないため、つい適量を超えて使いがちになります。皮膚の症状が完全になくなるほど塗り続けるより、70~80%程度の改善を目標にしてください。

 乾癬はステロイド外用剤の副作用が現れにくい疾患で、比較的強い外用剤を使います。それでも副作用として皮膚が薄くなり、内出血しやすくなることがあります。使用をやめれば、もとの皮膚に回復します。外用剤の使用で、皮膚の色が黒くなることはありません。

 皮膚症状が悪化したとしても、すぐに薬を強くしたり、量を増やしたりしないのが原則です。症状が悪化したために強い薬に替えて長期間使うと、副作用が出やすくなるからです。重症になれば、早く入院して治療するのが最善です。同様の治療をしても、入院と外来では効果が著しく異なります。

 ステロイド外用剤を長期間、大量に使っていて急にやめると、皮膚症状が悪化(リバウンド)します。副作用よりも、このリバウンドによる被害がはるかに深刻ですから、急な中止は避けるべきです。リバウンドは使用法の誤りでステロイドの副作用ではありません。各種のデータによると、最も強いステロイド外用剤を長期間使うときは、1日2.5グラム以下にして、1カ月25グラム以下の使用量を基準にすればよいでしょう。

 また少量でも塗布してはいけない部位があり、小さな範囲に集中的に使用しても副作用が出やすくなります。不足した部位はワセリンや他の外用剤で代用します。

 ステロイド剤は、危険な悪魔の薬といわれることがありますが、一般的には比較的安全な薬として認められています。

 「ステロイドを塗るなんて、あなたはこの子を廃人にする気なのですか。リバウンドでひどい目に遭うから、今すぐやめなさい」という人もいるでしょう。そうやって一部の皮膚疾患の人々をステロイド拒否に追い込み、皮膚科の治療を放棄させ、あるいはビジネスの世界に導く事例さえあります。しかし、そのうち1~2割の人がステロイド離脱に成功したとしても、その他の人は、リバウンドと経済的損失の二重の苦悩となってはねかえってきます。

 リバウンド現象はステロイドのみにあるのではなく、多くの薬にみられます。ステロイド依存、ワセリン依存になると悲劇ですが、ステロイド拒否もまた医療の恩恵から遠ざかる結果になります。

 ステロイド外用剤については情報があふれており、使っていいかどうかの判断に迷うことは残念です。大切なことは偏った情報で被害に合わないことだと思います。ステロイド外用剤が、皮膚疾患に悪影響を与えている場合があれば、ステロイド以外の外用薬も使用できます。また乾癬でもステロイド以外の外用剤が使えます。ですから医療のサービスを受けた方が、病気の改善、生活の質の向上には役立つと思います。

徳島新聞2000年10月8日号より転載

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