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【質問】 足の親指の付け根が内側に・・・

 20代の女性です。いつも高さ5センチほどの先の細いヒールを履いています。立ちっぱなしで仕事をしたときは足がむくんでしまい、最近、親指の付け根が内側に向いているのと、足の親指が小指の方に曲がっているのがとても気になります。靴を脱ぐときは、傷みもあります。これは「外反母趾(ぼし)」と呼ばれる症状なのでしょうか。指の間に挟んで治療する道具が市販されていると聞いたことがありますが、病院で診察してもらったほうがいいのでしょうか。また、何科を受診すればよいのでしょうか。教えてください。



【答え】 外反母趾 -整形外科で正確に診断-

加藤整形外科クリニック 加藤 憲治(徳島市仲之町3丁目)

 質問の内容から、外反母趾と考えられます。外反母趾とは母趾(親指)が小趾(小指)側に向かって屈曲変形した状態で、ひどくなると隣趾の上に重なってしまったり、母趾の基部が内側に突出して靴などにあたるため関節や皮膚に炎症が生じ、痛みます。全体に足の横幅は広がって足趾の並びが先細りの形状となり、多くの場合、扁平足(へんぺいそく)を合併しています。

 扁平足とは、簡単にいうと土踏まずのない「ベタ足」のことで、特に横アーチ(図1のa)と呼ばれる足底中央部のくぼみの減少が、外反母趾の発生と関係します。前足部の骨は甲の部分にある中足骨とそれにつながる趾節骨で構成されますが、母趾の外反変形はむしろ、第1中足骨(同b)が内反していくことが主因となって発生します。それぞれの中足骨間をつなぐ靭帯(じんたい)(同c)や筋腱(きんけん)が緩み、特に荷重のかかる第1、2中足骨の間が徐々に広がって、さらに母趾屈筋腱(同d)が母趾を外反する方向に作用して進行します。

 外反母趾は女性に多く、靴との関連もあります。高く先の細いハイヒールを履いた歩行では足先が締め付けられ、母趾は外反を強制されます。しかも、前足部に荷重が集中するため中足骨間は広がり、横アーチを減少させるように作用します。

 ある調査によると、前足部にかかる荷重は高さ9センチのヒールでは素足に比べて約3倍になると報告されています。すなわち、いつもハイヒールを履くことは、先に説明した外反母趾発生のメカニズムを自ら後押しして悪化させることになります。

 治療に関しては、まず病気を正しく理解することが大事で、それによって日常での注意事項がはっきりします。きつい靴やハイヒールは避け、足部は良く動かすことなどが基本的な考え方です。そして病状に合わせ、足部のストレッチや筋力強化を中心としたリハビリテーション、装具療法を検討することになります。

 手術療法は変形がひどく、他の治療が無効な場合に限って勧めることがあります。進行すると治りにくくなるので、軽い段階から予防も含めて治療を考えることが必要です。

 質問の装具については、さまざまな種類があります。代表的なものとして、足趾を開くために趾間にクッション材を挟む(図2の<1>)、中足骨部の開きを防止するために足部をバンドで締める(同<2>)、横アーチの減少を防ぐために足底にパッドを挿入する(同<3>)などのタイプがあり、それぞれの特徴を組み合わせて装具を作製します。

 また、シューズと足底板を足の形状に合わせて作る方法もあります。症状の軽いときは市販のものでも対応可能ですが、ある程度進行すると変形の程度も個々に違うので、採型してしっかりと適合したものを作製する必要があります。

 いずれにしても装具の選択と処方には専門的な知識が必要なので、正確な診断のために整形外科を受診されることを勧めます。

徳島新聞2002年9月8日号より転載

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