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【質問】 検診で「心雑音あり」の結果

 41歳の男性です。昨秋の生活習慣病予防検診の胸部診察で、「心雑音あり」との診察結果でした。1年前も同様でしたが、自覚症状はなく、指導区分も「日常生活に差し支えない」とのことでした。しかし、心臓のことなので先日、総合病院で精密検査を受けたところ、軽度の「弁膜症」と診断されました。手術の必要はないとのことでしたが、進行を防ぐために日常生活で気を付けなければいけないことを詳しく教えてください。また、ライフワークにしていた献血や趣味の水泳は無理でしょうか。



【答え】 心臓弁膜症 -定期的にチェックを-

健康保険鳴門病院 循環器科部長 田村 克也

 心臓は左右心房、左右心室からできており、それぞれの心房心室間、心室動脈間には弁が存在し、血液が一定の方向へ流れるように開閉しています=図参照=。この弁膜が変形し、血流に異常をきたしたものを弁膜症と言います。


 弁膜症には、弁が十分に開かなくなる狭窄(きょうさく)と、弁が閉まらず弁の間を血液が逆流する閉鎖不全があります。狭い弁の間を血液が流れたり、弁のすき間から血液が逆流したりするときに心雑音が発生し、心臓への負担が大きくなることで心不全に陥ります。

 障害は僧帽弁と大動脈弁に多く見られます。弁膜症の原因としては、以前はリウマチ性の僧帽弁狭窄症などが多かったのですが、現在は減少しています。最近では大動脈弁狭窄症や大動脈弁閉鎖不全症、僧帽弁閉鎖不全症などが主な弁膜症となっています。質問の男性の弁膜症も、恐らくこの3つの弁膜症のうちの一つではないかと思われます。

 どんな原因による、どんな弁膜症かで、経過や治療も変わってくるので、ここでは一般的な注意点を述べます。質問のような無症状の軽症心臓弁膜症であれば、経過を見るのみとなります。日常生活の注意点としては激しい運動は控え、疲労感、呼吸困難、動悸(どうき)などが生じない程度の運動にとどめるべきです。競技はできるだけ避ける必要があります。塩分は制限し、肥満防止に努め、心臓への負担を軽減することが必要です。

 もし、運動が許されているのであれば歩行、水泳、サイクリングなど大きな筋肉の収縮と弛緩(しかん)を繰り返す運動が適しており、質問の水泳に関しては、今まで通り続けられてもよいと思われます。また、献血に関しても問題ないと思います。

 その他に注意することを挙げます。<1>労作時の呼吸困難、夜間呼吸困難発作、顔面や下腿(かたい)のむくみなどの心不全症状が出現したときには、弁膜症が悪化した可能性があるので病院を受診することが必要です<2>弁膜症では不整脈を合併することがあり、その時には動悸をきたします。不整脈により病状が悪化することがあるので、やはり受診することが必要です<3>弁脈症のように障害を受けた弁には細菌が付着し弁をさらに破壊することがあります。これを感染性心内膜炎といいます。歯科、外科、泌尿器科、産婦人科の処置などで、血液中に細菌が入る可能性が予測される場合には、抗生剤の予防投与を受けるべきです。

 たいていの心臓弁膜症は自然治癒することなく、緩慢な経過をたどりながら進行します。弁膜症が進行した場合、治療の根本は外科的に弁の修復または弁置換術を行うことです。従って、6-12カ月に1回は受診し、心電図、胸部レントゲン写真、心エコー図検査などにより、合併症の有無、病気の進展の度合いのチェックを受けることが望ましいと思われます。

徳島新聞2003年1月19日号より転載

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