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【質問】 毛深い10歳娘、脱毛したいが…

 10歳の娘のことで相談します。ほかの同年代の女の子に比べてとても毛深くて悩んでいます。大人の毛ほど太くないのですが、うぶ毛のような長い毛が手足や口元にはえています。口元は薄いひげのようにも見えるので、時々は理髪店でそってもらっていますが、あまりそり過ぎると、もっと毛深くなるのではないかと心配です。また、手足も脱毛してもいいものでしょうか。初潮はまだなのですが、そろそろ本人も気にしているらしく、母としてもどうしたらいいか分かりません。夫は、どちらかといえば毛深いタイプで、私はほとんど毛がはえていません。成長とともに、薄くなってくるのでしょうか。脱毛剤は、少し怖くて使用していません。



【答え】 多毛症 -リスク高い治療は避けて-

徳島県立中央病院 皮膚科 敷地 孝法

 相談の文面から判断すると、娘さんは多毛症と思われます。「多毛」とは毛の数が増えるのではなく、本来うぶ毛であるべき毛が硬くなって(硬毛化)、毛深くなる状態をいいます。一般的に、毛には「性毛」(第二次性徴に伴って生えてくる陰毛、腋毛(えきもう)、男性ではひげや胸毛も含まれる)と、「無性毛」(性毛以外の毛、すなわち頭髪や腕の毛など)があります。

 多毛症も医学的には、無性毛性多毛症と、女性にみられる男性毛の多毛症の2つの型がありますが、両者は厳密に区別できるわけではありません。実際に娘さんの場合も両方の症状がみられているように思われます。

 多毛の原因はさまざまです。多くの場合、硬毛化はアンドロゲンという男性ホルモンが毛根に働きかけて促されます(頭髪においては逆の作用を示します)。しかし、このときにホルモンへの反応が強すぎることがあります。特発性の多毛と呼び、大半がこのケースであって、病的なものではなく、体質に近いものです。また「くせ毛」や「若はげ」が遺伝することがあるように、多毛症も何らかの遺伝性があるのかもしれませんが、正確なことは分かっていません。

 娘さんの場合は、症候的に「多毛症」と表現できても、それが病的である可能性は低いのではないでしょうか。今後、体つきが女らしくなっていくにつれて、多毛症も改善されていく可能性もあると思われます。

 ただ注意が必要なのは、まれにホルモン産生異常(副腎や卵巣などで男性ホルモンやコルチゾールが多量につくられる)のために、多毛を来すことがあることです。その場合には、多毛のほかに▽にきび▽声変わり▽筋肉の発達▽肥満▽身長の伸びが少ないなどの症状がみられます。このような症状を伴うようでしたら、小児科医に相談することをお勧めします。

 脱毛には「毛をそる」「毛を抜く」以外に「脱毛クリーム」「脱毛テープ」「電気針脱毛」「レーザー脱毛」などの方法があります。心配している「毛をそる」ことに関しては、動物実験では毛ぞりを繰り返すと毛が太くなることが知られていますが、人間においてはその根拠は全くありません。ただし、今後、毛ぞりを行うべきかどうかは、お母さんが指摘するように、娘さんの精神面を配慮した上で慎重に検討していくべきだと考えます。

 また、昨今のちまたのアンチエイジング(若返り)に対する関心の高まりもあって、多数の美容グッズや脱毛グッズが売られています。脱毛を専門に行っている医療機関も全国的に増えてきています。当院では行っておりませんが、一度そういった専門の医療機関に相談してみるのもよいかと思われます。ただし、個人的には、もう少し大きくなって治療の内容や副作用などを理解できるようになるまでは、あまりリスクの高い治療はしない方がよいのでないかと思います。

徳島新聞2004年10月24日号より転載

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