徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 冬になると肌にかゆみ

 32歳の女性です。冬になると暖房のせいもあって、肌がかさかさになってかゆくて仕方ありません。子どもも同じで、下着で締め付けている部分が特にかゆくなるようです。塗り薬はあるのですが、薬でしかかゆみを止める方法はないのでしょうか。また、普段の生活で気を付けることがありましたら教えてください。



【答え】 皮脂欠乏症 -保湿剤が刺激になることも-

麻野皮膚科 麻野 誠一郎(名西郡石井町石井

 寒くなって暖房が欠かせない季節になると気象情報では連日、乾燥注意報が出されます。このころ、腰や脚の肌がかさかさになってかゆくなります。これが「皮脂欠乏症湿疹(しっしん)」といわれるものです。肌が乾燥して潤いやしなやかさがなくなってくると、外からの刺激に対する皮膚の防御機能が低下し、肌が荒れます。このため皮膚炎が生じ、その情報がかゆみの知覚神経に伝わって、かゆみを感じるのです。

 皮膚の表層には、角質細胞が何重にも重なって内部を守っている角層と表皮があります。角質細胞の中では天然保湿因子が水分を保持し、細胞と細胞のすき間はセラミドなどの保湿成分で満たされ、表面は皮脂腺から分泌された皮脂膜で覆われています。このようにして皮膚から水分が蒸発するのを防ぐとともに、外部からの刺激(アレルゲンや微生物)から内部を守っているのです〈図参照〉。


 このような状態が常に維持できれば「水の滴るような」いい皮膚が保てるのですが、中年以降は加齢とともに、保湿成分が少なくなり、誰しも多かれ少なかれ皮膚が乾燥してきます。また、保湿成分の量は個人差があり、生まれつき少ない人は子どものころから乾燥肌になります。皮脂欠乏症湿疹になった場合には、その症状に応じて保湿剤やステロイド外用剤、かゆみの強い場合は抗ヒスタミン剤の内服などで治療します。

 日常生活では、ありきたりですが、まずバランスのとれた食事を心掛けることです。ビタミン不足などは肌荒れのもとです。二番目は、できるだけ湿度を保つことです。加湿器などを利用するのも有効でしょう。

 三番目は風呂での注意です。潤いが湯に取られてしまうので、熱過ぎる風呂に長く入らないようにしましょう。また、洗浄力の強いボディソープなどをたくさん使うと、その分潤いが失われるので気を付けましょう。ナイロンタオルやあかすりなどを使うことは、皮膚にヤスリをかけているようなものなのでゴシゴシこすらないようにしましょう。手で洗うのが一番です。保湿効果のある入浴剤なども市販されているので、自分に合うものを利用するのもいいでしょう。入浴後、保湿クリームで保湿成分を補うのもいいことですが、子どもには、外用剤そのものが刺激になっていないか、注意を払う必要があります。

 そのほか、電気毛布なども皮膚を乾燥させる原因になります。肌に触れる衣類は、刺激のない綿100%のものが良く、運動で血行を良くするのは構いませんが、乾布摩擦は良くありません。

 皮膚にとって、最も悪いことは引っかくことです。早めの手当で、皮膚を保護しましょう。かゆみの強い場合は、近くの皮膚科へどうぞ。

徳島新聞2005年1月30日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.