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【質問】 生理不順で体毛も濃い

 20代の女性です。初潮は11歳のときでしたが、生理がとても不順で、現在でも年に数回という状態です。体毛も濃く、悩んでいます。先日、友人から「多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群」という病気について教えてもらい、自分がこれに当たるのではないかと不安になりました。一度、婦人科を受診してみようと思うのですが、どのような診断、治療をされるのでしょうか。この病気であっても、妊娠や出産は可能ですか。
 



【答え】 多嚢胞性卵巣症候群 -治療すれば出産も可能-

ルナウイメンズクリニック院長 齋藤誠一郎(板野郡北島町中村)

 多嚢胞性卵巣症候群とは、排卵が障害されて、卵巣に多くの卵胞(卵子を含む袋)ができ、月経不順や無月経となる病気です。英語名の「polycystic ovary syndrome」を省略し、PCOSとかPCOということもあります。女性の5~10%に見られる一般的な病気です。

 月経不順と多毛が気になるとのことですので、多嚢胞性卵巣症候群の可能性があります。婦人科を受診することをお勧めします。以下に述べるように、治療により排卵し、妊娠・出産することもできます。

【検査と診断】
 婦人科では問診と内診を行い、超音波検査で卵巣を観察します。卵巣には小さな卵胞が数多く見られ、これが病名となっています。血中のLH、FSHというホルモンや男性ホルモンを測定します。<表>に示す診断基準をすべて満たしていれば、多嚢胞性卵巣症候群と診断されます。

多嚢胞性卵巣症候群の診断基準
1.月経異常
2.多嚢胞性卵巣
3.血中男性ホルモン高値かつ、LH基礎値高値かつFSH基礎値正常

【症状】
 月経不順の程度は、時間はかかるものの自然に排卵している方から、全く月経がない方までさまざまです。思春期からの生理不順が典型的です。時として男性ホルモンが高くなって多毛を伴います。20%程度に肥満を合併します。

【原因】
 一般的な病気でありながら不明な点が多く、原因はよく分かっていません。インスリンという血糖値を低下させるホルモンの効きが悪くなることが、発病の一因ではないかといわれています。

【治療(妊娠を望まれる方)】
 妊娠を望まれる方には、排卵を促す治療を行います。まず、経口排卵誘発剤であるクロミフェンという薬を内服します。排卵しない場合や妊娠に至らなければ、糖尿病の治療薬であるメトフォルミンをクロミフェンと併用することもあります。ただ、多嚢胞性卵巣症候群に対して保険適用がないため、使用に際しては、主治医から十分に説明を受けてください。

 それでも無効であれば、卵巣を直接刺激するゴナドトロピン製剤を注射します。副作用として、多胎妊娠や、卵巣が腫れあがって腹痛や脱水症状に陥る卵巣過剰刺激症候群がありますので、量を調節しながら慎重に投与します。また、外科的治療法として、腹腔鏡(ふくくうきょう)という内視鏡で、卵巣表面に小さな穴を開ける方法も有効です。

【治療2(妊娠を望まない方、出産を終えられた方)】
 月経とは、出血して子宮内膜がはがれ出てくることです。何カ月も月経がないと子宮内膜が厚くなりすぎてしまいます。過剰に厚くなると、がん化して子宮内膜がんとなることがあります。ですから、妊娠を望まなくても、月経不順を放置してはなりません。低容量ピルや経口女性ホルモンを定期的に飲み、性器出血を起こすことで内膜の肥厚を防ぐことができます。

【治療3(多毛)】
 程度が軽いものでは低容量ピル、副腎皮質ホルモン剤や利尿剤(尿量を増やす薬)などが使われます。効果が現れるまでに半年程度かかります。除毛クリームやレーザー脱毛併用も考えます。

【肥満による影響】
 多嚢胞性卵巣症候群は、肥満により重症化しますので、生活習慣を見直して、体重の適正化を図ります。

 最後に、多嚢胞性卵巣症候群の方は、子宮内膜がん以外に、心臓病、糖尿病、高血圧などになりやすいと報告されています。日ごろから生活習慣に気を配って、定期健康診断を受診してください。

徳島新聞2009年8月16日号より転載

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