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【質問】 将来の妊娠・出産に不安

 20代の女性です。私の血液型はB型のRh陰性で、結婚を考えている相手はO型のRh陽性。最近「血液型不適合妊娠」のことを知り、将来の妊娠・出産を不安に感じています。症状や予防法について教えてください。また、子どもは何人まで産めますか?



【回答】 血液型不適合妊娠 -「Rh」は要注意 管理が必要-

メイプルクリニック高橋産婦人科 高橋史朗(徳島市福島2丁目)

 血液型は、赤血球の表面にある抗原によって分けられます。最も重要なのはABOとRhの血液型で、妊娠にはこの血液型が大きくかかわってきます。

 母親に存在しない血液型が胎児にある場合を、血液型不適合妊娠といいます。母子で血液型の違う人はたくさんおり、血液型不適合妊娠は比較的多いといえるでしょう。

 妊娠すると胎盤が形成されます。胎盤内では、母子間の血液が直接混ざり合うことはないのですが、出産や手術などが原因で胎盤の中に出血が起こり、胎児赤血球が母体の血液中に流入することがあります。母体は、自分にはない胎児赤血球抗原に対する抗体をつくります。抗体は胎盤を通過して胎児血と抗原抗体反応を起こし、胎児赤血球を破壊します。

 その結果、胎児は貧血になり、貧血がさらに進めば心不全、胎児水腫となって胎児死亡が起こります。無事に出産しても、強い貧血や黄疸(おうだん)の治療が必要です。以上のような病態を、血液型不適合妊娠による胎児新生児溶血疾患といいます。このような状態でも、母親に症状はありません。従って、妊娠中の適切な管理が必要です。

 ABO型の不適合は、母親がO型で、A、B型の胎児を妊娠している場合に大量の抗体をつくる可能性があります。ご質問の方はB型で、男性はO型なので、この問題はないでしょう。

 胎児新生児溶血疾患で重症になるのは、Rh型不適合によるものが多いです。Rh血液型では、D、C、c、E、eの5種類の抗原が存在します。D抗原を持つ人をRh陽性、持たない人をRh陰性としています。Rh陰性は日本人の約0.5%で少数派です。Rh型不適合を引き起こすのはD抗原が最も多く、以下E、cの順です。

 妊娠すると、公費を使って全員に、血液型ABOやRh、不規則抗体などを検査します。不規則抗体検査は、ABO型抗体以外の血液型抗体を見つけるものです。陽性なら、胎児と不適合を起こさないか調べます。不規則抗体が陰性で、妊婦がRh陰性と確認された場合、父親の血液型を確認します。父親がRh陽性であれば、胎児もRh陽性と見なして、Rh型不適合を起こすことを念頭に置き管理します。

 妊娠中には、母体の血中にD抗体がつくられていないことを確認するための検査をします。数回実施し、異常がなければ出産も普通に行います。

 出産後にも、新生児の血液型がRh陽性で、新生児の赤血球に母体からの抗体が付着していないことを確認する検査を行います。検査結果が陰性であれば、妊娠中に抗体はつくられていないと判断します。

 また、出産時の胎盤出血などで新たに母体に抗体がつくられるのを防ぐため、出産後72時間以内に抗D免疫グロブリンの注射をします。抗D免疫グロブリンを使用することで、出産後に抗体がつくられる可能性や、次回の妊娠時に胎児新生児溶血疾患を起こす可能性は著しく減少します。

 以前の出産や流産、輸血によって既に抗体がつくられている人、妊娠中に抗体価が上昇してくる人などは、より高度な治療が受けられる高次施設へ送ります。高次施設では、胎児の貧血の評価をしながら、母体に対して抗体価を下げるために治療を行います。最終的には、胎児輸血など、危険と難易度の高い治療の選択も必要になります。

 抗体がつくられていないのであれば、出産は何度でも可能です。しかし妊娠を繰り返すたびに胎児新生児溶血疾患のり患率は高くなります。妊娠のたびに、抗体がつくられないよう予防に努めなければなりません。

徳島新聞2009年11月15日号より転載

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