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【質問】 体によくあざができる

 2歳の長女の体によくあざができるので、血液検査をしてもらったところ「血小板減少性紫斑病」と診断されました。血小板が1立方ミリ中に5千しかなく、血液製剤を点滴して7万にまで回復しました。血液製剤は心配ないのでしょうか。日常生活で気を付ける点を教えてください。



【回答】 小児の血小板減少性紫斑病 -受傷による出血に注意-

徳島赤十字病院 小児科部長 渡辺 力

 もし、けがをして出血が止まらなければ大変なことになりますが、そうならないように活躍するのが血小板と凝固因子です。血小板は出血部位で凝集して固まり、凝固因子を呼び寄せて周りに線維網を形成し、止血します。血小板は血液中の小さな細胞の一つで、正常なら1立方ミリの血液中に15万~40万個あり、これが減少して出血しやすくなるのが血小板減少性紫斑病です。

 血小板が5万個以下だと出血しやすくなり、皮膚の毛細血管から簡単に出血して、紫斑や点状出血斑として現れます。2万個以下になると出血は多くなるとされています。血小板に対する抗体ができ、抗体のついた血小板が脾臓(ひぞう)で捕捉(ほそく)されて壊されやすくなるために起こりますが、最近では、抗体が血小板の源である巨核球に作用し、血小板の産生を抑えているとも考えられています。

 診断は容易で、血小板だけが減少して貧血や白血球数の増減がなく、元気であれば、まず血小板減少性紫斑病です。もし典型的なものでなければ、骨髄検査をして、ほかの疾患と鑑別する必要があります。常に出血する可能性はありますが、命にかかわる脳出血などを起こすことは非常にまれです。

 血小板数は自然に回復する場合も多いのですが、2万個以下で粘膜出血がある場合には、血小板を増やす治療をした方がいいとされています。急性期の治療には免疫グロブリン製剤か副腎皮質ステロイドが用いられます。急に発症し、発症しても元気であるため、早期に見極めるのは難しいと思われます。

 血液製剤は、ヒト献血由来の血液から作られています。日本の輸血の感染対策は世界のトップクラスで、血液製剤を精製するのに、輸血を介して伝搬する感染症に対して詳細な検査(NAT検査)が済んでいるものが使用され、製造工程でもさまざまなウイルスの不活化・除去が行われています。日赤血液センター由来の血液製剤はまず安全と考えていいと思われます。

 しかし、極めて少ない比率ではありますが、未知のウイルスの感染症伝播のリスクを完全に排除することはできません。また、非常にまれですが、重篤な副作用としては、ショック、肝機能障害、黄疸(おうだん)、無菌性髄膜炎などが報告されています。発熱や頭痛、発疹(ほっしん)はしばしば経験します。ですから、血液製剤の使用は治療上の必要性を十分に検討した上で、必要最小限にとどめるようにするべきだと思います。

 小児の血小板減少性紫斑病はほとんどが急性ですが、10~15%程度が慢性となります。通常は、半年たっても血小板数が正常とならない場合に慢性とされていますが、小児では数年かけて徐々に正常になっていく場合もあります。

 慢性型は急性型から移行し、低い血小板数で安定する型と再帰型、いわゆる再発する型があります。発症時の血小板数が比較的多い例や年長児の例では、慢性型になることが多い印象があります。年長児では、膠原(こうげん)病や自己免疫疾患の初期症状として発症していることもあります。

 急性期と同様、慢性期になると受傷して出血しないように注意するべきです。日常生活では、身の回りのけがをしそうな所(転倒しそうな所、刃物などある所など)を整備しておくことが重要です。また学校生活では、格闘技は絶対に禁物で、基本的に、ドッジボール、サッカー、ラグビーなど頭を打つ危険性のあるものは避けます。

 解熱鎮痛剤には血小板機能を抑える作用がありますので、使うときには医師と相談してください。受傷して出血している場合、手術や抜歯の前、出産などの際には、急いで血小板数を上昇させる必要があります。

徳島新聞2011年2月20日号より転載

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