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【質問】 妊娠したいが服薬不安

 20代の女性です。少し前から、目がかゆく鼻もぐすぐすしてきました。花粉症にかかったのだと思います。子どもがほしいと考えており、薬を飲むことは不安です。妊娠しても心配がない治療方法があれば教えてください。



【回答】 花粉症 -外用薬なら悪影響少ない-

阿南共栄病院 耳鼻咽喉科医長 陣内自治

 赤ちゃんを希望されている妊娠準備期の女性の花粉症治療について説明しましょう。妊娠を希望されている女性は、どんな薬にも気を使われることと思います。妊娠4週から12週ごろまでは器官形成期と呼ばれ、赤ちゃんの主要な臓器が育つ時期です。花粉症に限らず、どんな病気であれ、内服薬は原則的に使用しない方が無難です。

 どうしても投薬しなければならない症状がある場合には、薬の効果(有益性)が副作用(危険性)を上回る場合にのみ使用します。このような妊娠期の投与法を有益性投与といい、主治医との相談が必要です。

 外用薬は、妊娠初期でも赤ちゃんに影響がほとんどないとされています。最近使われている花粉症治療の鼻噴霧用ステロイド薬は、鼻の症状をしっかりと抑える作用があり、重篤な副作用も報告されていないため、知らないうちに妊娠したとしても大きな心配は必要ないと思います。

 器官形成期が過ぎ、いわゆる安定期に入ったら、漢方治療も安全な治療としてお勧めできます。麻黄(まおう)といわれる生薬を含んだ漢方薬が鼻炎によく効くとされています。

 妊娠経過が思わしくない場合には、安全を期して、麻黄がない漢方を使う方が安心です。妊娠中の鼻炎にはよく、桂枝湯(けいしとう)や香蘇酸(こうそさん)などが処方されます。これらに含まれる桂枝(シナモン)や蘇葉(そよう)(シソの葉)、生姜(しょうきょう)(ショウガ)などの生薬は、普段食べ慣れている食材と変わりないので、安心なのもうなずける気がしますね。

 目のかゆみや、鼻がぐすぐすするという症状があるのでしたら、まず、アレルギー性鼻炎かどうか診断してもらうことが治療の第一歩です。少し前からスギ花粉の飛散が始まっていますので、スギ花粉症の可能性が高いのではないでしょうか。

 耳鼻咽喉科で診察をしてもらうと、急性鼻炎かアレルギー性鼻炎かの診断はつきやすいと思います。鼻水の中に含まれる血液成分を検査すると、さらに正確に診断できます。これは鼻汁好酸球検査といい、比較的安価ですので、妊娠準備期に限らず鼻症状が気になる方は、検査を受けられることをお勧めします。

 アレルギー性鼻炎の場合は、「何に対してアレルギー反応を起こすか」を調べる検査も必要です。この血液検査は結果が出るまでに1週間程度を要しますが、アレルギーを予防する上で非常に役立ちますので、アレルギー性鼻炎の患者さんであれば一度精密検査をしておく価値はあります。検査結果のコピーをもらって大切に保管しておくこともお忘れなく。

 患者さんができる予防法として▽花粉飛散量を調べる▽外出時はマスクやゴーグルを装着する▽花粉が付着しにくい服を着る-などがあり、アレルゲン(原因となる物質)の吸入をなるべく回避することが重要です。どうしても症状がきつい場合には、お湯で洗顔したり熱いシャワーを浴びたりすると鼻の症状が楽になるようです。

 アレルギー性鼻炎の治療についてですが、最近は、内服薬にたくさん種類があり、特徴が違う薬が開発されています。主治医に、自分の症状をどうしてほしいかを具体的に伝えると、ニーズに合った薬を選択してくれます。

 抗ヒスタミン剤の主な副反応として気になるのは眠気です。眠気についても、しっかり希望を伝えることが重要です。車を運転する人には眠気が全くない内服薬を選択することも可能です。

 「眠気があってもいいから鼻水を止めてほしい」とか「鼻づまりが苦しくて夜眠れない、鼻が通って眠れるようにしてほしい」といったことも耳鼻咽喉科でご相談ください。

徳島新聞2011年3月6日号より転載

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