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【質問】 暑さで長女が気分悪く

 10歳の長女が、先日の暑い日に気分が悪くなりました。これからはもっと暑い日が続くと思われるので、熱中症が心配です。暑くても大丈夫な人もいると思いますが、何が違うのでしょうか。日ごろから気を付けることや、対策があれば教えてください。



【答え】 熱中症 -日常生活での注意が基本-

徳島保健所 疾病対策担当医師 渡邉美恵

 人間は、体温を常時36~37度に調節している恒温動物です。私たちの体は、常に熱が産生されると同時に、異常な体温上昇を抑えるための調節機構が備わっています。

 暑い時には、自律神経の働きで、末梢(まっしょう)血管が拡張して皮膚に多くの血液が分布し、外気への熱伝導による体温低下を図ったり、汗をかいて体表から熱を奪って体温を低下させたりしています。

 このような体内での血液分布の変化や、汗で水分や塩分(ナトリウムなど)が失われるなどの変化に対して、体が適切に対処できなければ、筋肉のこむら返りや失神(脳への血流が一時的に滞る脳貧血)を起こします。そして、熱の産生と放出とのバランスが崩れ、体温が著しく上昇してしまう状態が熱中症です。

 熱中症の発生は、梅雨の合間に突然気温が上昇した日や梅雨明けの蒸し暑い日など▽気温が高い▽湿度が高い▽風が弱い▽日差しや照り返しが強い▽急に暑くなる-といった環境要因に加え、体調や暑さに対する慣れも影響するため、気温がそれほど高くない日でも、体が暑さに慣れていない時は注意が必要です。

 人間の体は、暑い環境での運動や作業を始めてから3~4日たたないと、体温調節が上手になってきません。このため、急に暑くなった日や、久しぶりに暑い環境で活動した時には、体温調節がうまくいかず、熱中症で倒れる人が多くなっています。

 また、▽幼小児・高齢者▽肥満▽普段から運動をしていない▽暑さに慣れていない▽過度の衣服を着ている▽脱水状態にある▽体調が悪い-といった人は、熱中症になりやすいので注意してください。

 さらに、心疾患、糖尿病、精神神経疾患などの病気の人のほか、広範囲の皮膚疾患の人なども体温調節機能がうまく働かず、要注意です。特に幼小児は、体温調節機能がまだ十分に発達しておらず、熱中症のリスクは成人よりも高いので十分な注意が必要です。

 熱中症は予防法を知っていれば防ぐことができます。熱中症を防ぐためには日常生活における注意が基本となります。小児の熱中症を防ぐポイントを挙げておきます。

 <1>子どもを十分に観察しましょう。顔が赤く、ひどく汗をかいている場合は、体温がかなり上昇していると思われます。涼しい場所で十分な休息を与えましょう<2>放熱を促進する服装を選択し、適切に着脱させましょう。小児は衣服の選択・着脱に関する十分な知識を身に付けていません<3>喉が渇く前や、暑い所に行く前から、積極的に水分を取らせましょう<4>日ごろから適度に外遊びをさせて、暑熱順化(暑さに慣れる)を促進させましょう。

 なお、重症の熱中症は生命に関わることもあります。▽頭がガンガンする▽吐き気がする・吐く▽身体がだるい-といった時には、足を高くして休ませ、水分・塩分を取らせますが、自分で水分・塩分を取ることができなければ、すぐに病院へ連れていってください。

 さらに、▽意識がない▽引きつけ・けいれんがある▽呼び掛けへの返事がおかしい▽まっすぐに歩けない▽体温が高い-といった時には、水や氷で首・脇の下・足の付け根などを冷やすとともに、すぐに救急隊を要請してください。

徳島新聞2011年7月3日号より転載

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