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【質問】 いびき大きく家族に迷惑

 50代の男性です。家族からよく、いびきが大きいと言われます。時々呼吸が止まっているとも言うので、睡眠時無呼吸症候群かもしれません。常に肩が凝っているほか、昼食後は眠くなって1時間ほど寝ています。治療した方がいいのでしょうか。鼻の通りをよくするラジオ波を使った日帰り手術があると聞きましたが、県内でも受けられるのでしょうか。



【答え】 いびき・睡眠時無呼吸症候群 -原因に応じ外科・保存治療-

阿南共栄病院 耳鼻咽喉科医長 近藤英司

 「いびき・睡眠時無呼吸症候群」は、2003年2月にJR岡山駅で起きた新幹線の居眠り運転事故以来、マスコミでも頻繁に取り上げられて有名になりました。

 日本での睡眠時無呼吸症候群の患者は、男性は全人口の3.3%、女性は0.5%といわれ、決してまれな症候群ではありません。睡眠時無呼吸症候群の症状として、いびきは必発であり、毎日いびきをかく習慣性いびき症は睡眠時無呼吸症候群の予備群です。習慣性いびき症の患者は、睡眠時無呼吸症候群の数倍に及ぶといわれています。

 その両者を合わせて「いびき・睡眠時無呼吸症候群」と呼んでいます。同症候群は、昼間の居眠りや仕事の能率低下、周囲への迷惑など社会的影響が大きい上、心臓や脳にも影響し、高血圧や不整脈、心筋梗塞、脳卒中の合併率が高く、放っておくべきではありません。

 いびきの大きさは、上気道(鼻とのど)が狭くなっている程度を示します。いびきが大きいほど、狭くなっている程度が著しいということです。入眠すると上気道を形作る筋肉が緩み、あおむけに寝た状態ではのどちんこの周りや舌が後ろに落ち込んで、起きている状態より上気道が狭くなります。

 健康な人でも寝息や軽いいびきは起こりますが、肥満の人、お年寄り、鼻の通りが悪い人、へんとうや舌が大きい人、顎が小さい人などは、大きないびきや無呼吸が起こりやすいといえます。さらに、あおむけで寝ることや飲酒は、いびきや無呼吸を悪化させます。

 「いびき・睡眠時無呼吸症候群」の診断には、視診やファイバースコープによって上気道を観察し、確定診断のために睡眠検査を行い、睡眠中の無呼吸の有無や血液中の酸素の低下などを調べます。

 治療法は重症度、年齢、肥満度、上気道の状態などを考えて決定され、手術による外科的治療と保存的治療があります。

 外科的治療では、鼻の通りをよくする手術やへんとうの摘出手術などがあります。保存的治療では、鼻マスクから空気を送り、狭くなった上気道を広げる経鼻持続陽圧呼吸(NCPAP)療法のほか、肥満の人には運動や栄養指導によるダイエット、顎が小さい人には口腔(こうくう)内装置、そして一般的に、横向きに寝ることや飲酒を控えることを指導します。

 NCPAP療法は、重症例には最も有効ですが、原因に対する治療ではありません。根本的に治療するには、原因に応じた治療を組み合わせて行います。高度の肥満であれば、まずダイエットを優先させ、鼻やへんとうに原因があれば手術を考えます。

 相談の男性の場合、症状から睡眠時無呼吸症候群が疑われます。また、鼻の通りが悪い場合は、アレルギー性鼻炎、鼻のポリープ、副鼻腔炎(ちくのう症)、鼻中隔の曲がりなどが考えられます。

 当科ではアレルギー性鼻炎に、バイポーラという電気メスや、コブレーターというラジオ波機器を用いた日帰り手術を行う場合もありますが、内視鏡を用いた鼻のポリープや副鼻腔の手術、鼻中隔を矯正する手術を多く行っています。

 鼻の通りをよくすることは、NCPAP療法を行う上でも有利です。いびき・睡眠時無呼吸症候群や鼻の疾患について専門医を受診することをお勧めします。

徳島新聞2011年7月31日号より転載

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