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【質問】 寒いと手が青くしびれる

 40代の女性です。寒くなると両手が青白くなり、しびれが起きます。病院で「レイノー現象」だと言われました。暖かい時季は症状がないのですが、冬になると症状が出ます。寒いと手袋などをしていますが、どのようにすればいいですか。



【答え】 レイノー現象 -基礎疾患の有無検討を-

福本ヒフ科 院長 福本大輔(徳島市かちどき橋2丁目)

 指が突然蒼白(そうはく)化し、数分後に紫色になり、赤くなって正常色に戻るという一連の現象をレイノー現象と呼びます。これは血流障害が関与しており、蒼白化は動脈の収縮によって血流が減少した状態、紫色は毛細血管・小静脈のうっ滞、赤くなるのは反応性の充血です。

 色調の変化は、蒼白になっている部分の境界が比較的鮮明なことが特徴です。蒼白→紫→赤の3相性の変化が基本ですが、白→赤や白→紫など2相性のこともあります。経過は数分から30分で、痛みやしびれを伴うことも多いです。

 レイノー病は基礎疾患がなく、寒冷などを誘因として生じます。治療は、寒冷を避けることを中心とした生活指導と血行改善を意図した対症療法が主体です。▽室内の保温に努めて寒冷時の不要な外出は避ける▽やむを得ず外出する場合は手袋・厚手の靴下を着用する▽炊事や洗濯に湯を使用する▽冷蔵庫内の物の出し入れの際にも手袋を着用する-など、日常の注意が大切です。

 喫煙は末梢(まっしょう)循環に悪影響を与えるため、禁煙する必要があります。手首に巻くタイプの使い捨てカイロの使用も有効です。薬物治療については、血行改善を目的とした薬剤が使用されますが、特にビタミンE製剤は、重大な副作用が少ないためによく使われます。

 基礎疾患がなく、寒冷などを誘因としてレイノー現象が生じるものをレイノー病といいますが、レイノー病のほか、レイノー現象の約4分の1は、さまざまな基礎疾患に伴って2次的に生じますので、原因となる基礎疾患の有無を検討する必要があります。

 レイノー現象の原因になるものは、振動工具の使用などの物理的刺激、薬剤、膠原(こうげん)病、血液疾患などです。これらの中で重要かつ比較的頻度の高い疾患は汎発性強皮症です。

 汎発性強皮症は膠原病の一種で、レイノー現象はその初期症状の一つです。冬季に、手指の症状の増悪を繰り返しながら皮膚が硬化していく難治性の疾患で、皮膚の硬化が指から肘の辺りまでに限られるタイプと、肘を越えて硬化が進行するタイプがあります。また、逆流性食道炎、肺線維症、強皮症腎クリーゼ、原発性胆汁性肝硬変などの内臓病変を合併することもあります。

 汎発性強皮症の皮膚症状として、早期では指の皮膚の浮腫(ふしゅ)が見られ、ソーセージ様になります。進行すると皮膚が硬化し、指で何かをつまみ上げることができなくなります。指が曲がったまま固まったり、血流が悪くなって難治性の皮膚潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)が生じたりすることもあります。

 皮膚の硬化は手だけではなく、腕や顔にも見られます。顔の皮膚の硬化により自然なしわがなくなり、表情が乏しくなります。開口障害や舌が出しにくくなるということもあります。

 その他には、爪(そう)上皮の出血点や、手や顔などに見られる毛細血管拡張、口周囲の放射状のしわなどが特徴的です。典型例では皮膚症状だけで診断することができますが、疾患の程度や詳細を知るために、抗核抗体などの血液検査や皮膚の組織検査が必要な場合もあります。

 これらのことを踏まえて診察医と相談されるのがよいと思います。

徳島新聞2012年1月8日号より転載

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