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【質問】 授業中寝る 宿題をしない・・・

 中学1年になる長男のことですが、小学校低学年のころから「授業中に寝ている」「宿題をしてこない」「同級生とよくけんかをする」など、学校から注意されることがしばしばありました。性格の問題かと思っていましたが、病院で診てもらった結果、発達障害の一つ「注意欠陥多動性障害(ADHD)」と分かりました。服薬を続けて、性格も穏やかになっていますが、今後、問題行動を起こすことのないよう最善を尽くしたいのです。アドバイスをお願いします。



【答え】 注意欠陥多動性障害 -自信つけるよう手助けを-

徳島大学医学部保健学科 二宮恒夫

 治療薬の服用によって、行動の改善がみられたことは一安心です。本人にとっては、注意されることが少なくなり、学校生活を楽しく送れるようになったことでしょう。これからも、子どもの成長を見守っていくわけですが、一番のご心配は、将来、職業を身に付けて社会に適応できるようになるだろか、ということではないでしょうか。

 学校生活では、教師・友人とのコミュニケーションや、クラブ活動などでの先輩・後輩との付き合いを通して対人関係を学びます。学年が上がるにつれて新しい知識を習得し、社会に適応する力を身に付けていくことになります。日々変化に富む学校生活は、まさに社会適応に向けた練習の期間です。

 社会適応への力の源は自信です。自分が得意なのはこれだと思うことに出合えば、その得意なものを生かす職業に就こうと考えるようになります。子どもにとっての学校生活は、自分の潜在能力に気付き、自信をつける場でもあります。子どもが自信をつけるように手助けすることが、周囲の大人たち、特に親の務めではないかと思います。

 これまでは、命令的な指示で子どもの行動を矯正しようとしたことが多かったと思います。これだと子どもは自尊心を傷つけられ、自信の低下につながっていたでしょう。

 子どもの行動が落ち着き、自尊心が傷つけられる機会が少なくなったとはいえ、これからも、周囲の人たちには理解の困難な出来事は起こると思います。同じ小さな失敗が繰り返えされるかもしれません。それにいら立たしさを覚え、つい子どもに自信を失わせる言葉を掛けるときがあるかもしれません。

 しかし、「子どもに自信を」が、大切な対応の基本です。

 子どもが社会に出るまでには、まだ時間があります。焦らず、ゆっくりと、どのように声を掛けてやれば子どもに自信が生まれるのかを考えましょう。子どもの良い点を強調し、得意なところを継続して取り組む気持ちを起こさせる言葉が良いでしょう。

 そのためには、子どもの日々の学習姿勢や行動をきちんと知ることが大切です。折に触れ教師と連絡を取り、学校での様子を聞きながら、子どもへの対応を教師とともに整理しておきましょう。

 今はインターネットの時代です。ADHDの特徴や、対応、そして治療に関する教科書的な情報は入手しやすくなっています。しかし、これらの情報は参考にしかなりません。子どもへの言葉や対応は、目の前の子どもに適切なものでなければなりません。「子どもから学ぶ」が、二つ目の大切な対応の基本です。

 薬物治療としては、「コンサータ」が服用されていると思います。本剤の適応年齢は6~18歳ですが、18歳以上になっても治療上の有益性と安全性が確保されれば、慎重に投与を続けることができるようになりました。

 親、教師、そして信頼のおける専門家(臨床心理士、医師ら)が、子どもを円の中心に置いて、それぞれの専門の立場から子どもを知り、子どもの将来のためになすべきことを話し合っていきましょう。

徳島新聞2012年5月6日号より転載

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