徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

除去手術に戸惑い

 【質問】60代の女性です。少し前から下着に出血の跡が付くようになりました。塗り薬ではよくなりません。泌尿器科の医師に「尿道にできものができています。手術で除去しないといけません」と診断を受けました。今まで聞いたことがなかったので、戸惑うばかりです。どんな手術か教えてください。

 

 吉野川医療センター泌尿器科 林秀樹 先生      

電気メスで切除 数日入院

 【答え】尿道の腫瘍は、なじみがない病気かもしれません。

 腫瘍は良性のものと悪性のものに分けられます。良性腫瘍は「尿道カルンクル」と呼ばれるものが最も多く、他に嚢胞(のうほう)、ポリープ、尖圭(せんけい)コンジローマなどがあります。悪性腫瘍は女性の全腫瘍の約0・02%で、まれな疾患です。

 尿道カルンクルについて説明します。女性の外尿道口(尿が体外に排泄(はいせつ)される出口)付近に生じる、ピンク色や暗赤色の良性のできものです。一般的に尿道の後壁(背中側)にでき、数ミリ程度のものから、大きなものは大豆以上になります。閉経後の経産婦に発症することが多く、更年期前の発症はまれです。

 原因ははっきりしないものの、外尿道口での炎症が繰り返された結果、発症するとされます。炎症の原因は▽排尿を我慢することで外尿道口が刺激される▽外尿道口から細菌が侵入する―などが挙げられます。

 出血は何らかの原因で、すれたためでしょう。自然に止まる場合がほとんどです。

 尿道カルンクルが大きくなり外尿道口をふさぐと、頻尿や残尿感、排尿時の痛みが起きることがあります。外尿道口がふさがれることによって、膀胱(ぼうこう)や尿道で細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎を発症する場合もあります。

 尿道カルンクルは良性のできものです。特に症状がなければ、そのまま放置して問題ありません。しかし、次第に大きくなることがあります。出血を繰り返し、頻尿や残尿感、排尿時の痛みのために、日常生活に支障を来すようなら治療が必要です。

 症状が軽度なら、塗り薬(軟膏(なんこう))で治療します。ステロイド軟膏や抗生剤軟膏を用います。軟膏治療は尿道カルンクルそのものを消滅させる治療ではなく、炎症や腫れを引かせて症状改善を図る治療です。

 軟膏治療で治らない、または尿道カルンクルが大きいため手術をした方がいい、と考えられる場合は、手術で切除します。

 手術は、局所麻酔か下半身麻酔(腰椎麻酔)で行い、尿道カルンクルを電気メスなどで切除します。多くの血管を含むので、切除した部位の出血を電気で凝固し、縫い合わせて止血します。吸収糸を用いるため抜糸の必要はありません。

 手術時間は半時間程度。手術後、出血がないかなど創部を確認します。切除した部位のむくみによって、一時的に尿が出づらくなることがあるので、経過確認のために数日の入院が必要です。

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.