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【答え】 手根管症候群 -投薬、効かなければ手術を-

徳島大学 整形外科 花岡 尚賢

 手根管症候群について、少し説明します。手関節の手のひら側に、骨と手根靭帯(じんたい)とでできた手根管という正中(せいちゅう)神経が入っているトンネルがあります。このトンネルの中で正中神経が慢性的に圧迫され、手のしびれや痛み、運動障害が出現する病気です。

 手の過度の使用、妊娠によるむくみ、骨折や腫瘤(しゅりゅう)によるトンネルの圧迫、糖尿病、血液透析によるアミロイドという物質の沈着などが原因になるといわれ、中年以降の女性に多く起こります。

 初めは親指、人さし指、中指、薬指の親指側に、しびれと痛みが起こります。これらの症状は夜間、特に明け方に強くなるのが特徴で、夜間に痛みで目が覚めることもありますが、手を振ると少し楽になります。進行すると親指の付け根の筋肉がやせてきて、縫い物や、ボタンかけなど、物をつまむ細かい作業が困難になります。

 しびれや痛みが軽症から中等症の場合は消炎鎮痛薬やビタミン剤を使うほか、手首を安静に保つため装具を用いたり、ステロイド薬のトンネル内注射をします。

 これらの療法が効かない場合や筋肉にやせ細りがある場合は手術を行います。手術の方法は手のひらを数センチ切り、靱帯を切ってトンネルを開き、神経の圧迫を取り除きます。筋肉がやせた状態が長く続くと、トンネルを開放する手根管開放術だけでは回復ができないため、腱(けん)移行術という健康な筋肉の腱を移動する手術が必要になります。

 靱帯を切ることでいったん握力が落ちますが、半年くらいで回復します。筋力は、手術前の障害の程度によって正常に戻らない場合もありますが、しびれは平均6~8週間ほどで消えることが多いです。

 相談の人は、装具の使用で夜間のしびれは改善したものの、手を使うと特に手首に痛みを感じるとのことです。ただ、手根管症候群では手指の痛みは頻繁に生じますが、手首の痛み自体は比較的少なく、腱鞘炎(けんしょうえん)なども併発している可能性があります。原因の一つに手の使いすぎがあるので、注意してもらうとよいと思います。腱鞘炎の場合も、装具やステロイド薬の腱鞘内注射が効果的です。

 糖尿病があるようであれば、そのコントロールが必要ですが、残念ながら食事での予防は難しいと思います。夜間装具や鎮痛剤、ビタミン剤を使った現在の治療でも症状が悪化したり、運動障害が出たりするようなら、やはり早めの手術をお勧めします。

徳島新聞2007年12月30日号より転載

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